開業届を提出時の必要書類とは?
提出方法・注意点まで詳しく解説

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個人事業主としてビジネスを始める際に必要な最初のステップが「開業届」の提出です。この記事では開業届の基礎知識から提出方法、注意点、開業後に行うべき手続きまでを分かりやすく解説します。

開業届とは?
提出の目的と必要性を分かりやすく解説

開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)とは、事業を開始したことを税務署へ届け出るための書類です。個人で事業を始めた日から原則1ヶ月以内に提出しなくてはなりません。(所得税法第229条)

開業届の提出を行わないまま事業をスタートしたとしても罰則はありませんが、提出しないと折角の税制上の優遇や制度利用ができなくなる可能性があります。

開業届を提出する理由とは

開業届がないと、事業そのものの信頼性が下がる危険性があります。場合によっては「副業」や「趣味」と判断され、事業所得として認められない可能性もあります。

目的 解説
事業開始の公式な証明 自分のビジネスが税務上「事業」であると認定される
青色申告の申請 節税メリットが多い青色申告を行うための前提
補助金や融資申請 開業届の控え添付が申請時の条件になる場合があり、審査での信用力にもつながる
各種保険・共済制度の加入 小規模企業共済国民年金基金の加入条件

開業届を出さない場合のデメリット

罰則こそないとはいえ、開業届を提出しなかったときのデメリットは多岐にわたり、影響度合いも大きいといえます。

デメリットの内容 詳細説明
青色申告ができない 最大65万円の特別控除などの節税メリットが受けられなくなる
屋号付き口座の開設ができない 多くの金融機関では屋号名義の口座開設時に「開業届の控え(受領印付き)」の提出を求められます
融資や補助金の申請に支障が出る 開業実績の証明ができず、金融機関や自治体からの信頼性が低下する
経費計上の信頼性が下がる 税務署から”正式な事業開始”と認められず、税務調査時に不利になる可能性

中でも青色申告ができないと、最大65万円の特別控除を受けられないために納める所得税・住民税が増えてしまうリスクに直面します。また、取引先に与える信用や印象度アップにもプラスに働く屋号付きの銀行口座も持てないことも大きなデメリットといえます。

個人事業主編開業届の提出に必要な書類一覧

次に個人事業主が開業届を提出する際に必要な書類をみてみましょう。

書類名 説明
個人事業の開業・廃業等届出書 紙ベースで提出の場合、国税庁の公式サイトからダウンロード可能。提出用と控えの2部準備 オンラインでの申請も可能
本人確認書類 運転免許証、マイナンバーカードなど
印鑑 認印可。シャチハタは不可
青色申告承認申請書 青色申告を希望する場合は開業から2ヶ月以内に提出
適格請求書発行事業者の登録申請書 インボイス登録を希望する場合

会社設立後の手続き法人の開業届に必要な書類一覧

法人を設立した場合、以下の書類を税務署に提出する必要があります。個人事業の開業に比べ提出書類が多く、記載すべき事項もやや複雑です。顧問契約を結ぶことが決まっている税理士がいるような場合は、一連の手続きを税理士に依頼するのも省力化の有効な手段です。

書類名 説明
法人設立届出書 税務署に提出する基本の届出書。設立から1ヶ月以内が目安
登記簿謄本(履歴事項全部証明書) 法務局で取得可能。会社の設立登記を証明する書類
定款の写し 設立時に作成した定款のコピー
法人番号の通知書のコピー 国税庁から発行される法人番号の通知書
青色申告承認申請書(法人税) 法人税において青色申告を希望する場合に必要。3ヶ月以内が目安
源泉所得税の納期の特例承認申請書 従業員に給与を支払う場合、納付回数を年2回に減らす制度の申請書
消費税関連の届出書 課税事業者選択届出書など、消費税の課税方式に関する届出書

提出方法別開業届の出し方と必要なもの

開業届の提出方法には大きく分けて以下の3つの方法があります。一定程度のITリテラシーがある人ならば、自力でオンライン提出するのが最も時短効果が高く、事業専念できる時間を確保できます。

開業届のオンライン提出方法は当サイト・コラム「開業届をオンラインで行う方法とは?e-Taxのやり方・注意点等を税理士事務所が解説」でも詳しく触れていますので、ぜひご参照ください。

提出方法 説明
最寄りの税務署の窓口で提出 最寄りの税務署で直接提出する方法。その場で不明点を質問できる。控に受領印をもらうことで、事業開始の証左になる。
郵送で提出 最寄りの税務所に必要書類と併せて郵送。控え用の開業届(コピー)を同封し、受領印付きの控えを返送してもらう。返信用封筒と切手の同封が必要
オンライン提出(e-Tax) e-Taxソフトまたはfreeeやマネーフォワードなどの会計ソフト経由で届け出る。PCに加え、マイナンバーカードとICカードリーダーが必要

ケース別必要書類のポイントを解説

フリーランスとして開業する場合には特別な許認可は不要で、基本的な開業届一式で足りますし、副業・週末起業(雑貨販売など)の場合も原則として許認可不要です。

しかし、始める事業によっては、単に開業届を提出するだけでは完結せず、行政等の許認可が必要なものがあり、開業届にプラス事業内容に応じて定められた届け出書類提出を求められます。代表的な例を以下に記載します。

業種(提出方法) 主な許認可・届出書類 説明
軽貨物ドライバー・
配送業
運輸支局に貨物軽自動車運送事業経営届出書の提出が必要。車検証の写し・自賠責保険証などを添付 自家用軽貨物車を使って運送業を営む場合に必要。営業ナンバー(黒ナンバー)取得必須。
美容室・理容室 美容所開設届出書を保健所(市区町村)に提出が必要。管理美容師資格証の写しに加え、施設図面を添付 美容師法に基づき、営業前に保健所の立入検査と営業許可が必要。管理美容師の配置が条件
飲食店 飲食店営業許可申請書を保健所(市区町村)に提出が必要。食品衛生責任者の資格証明、店舗設備図面などを添付 食品衛生法に基づく許可制。営業開始の10日前までに届出が必要。地域により防火管理者届出も。

開業届提出時の注意点と
トラブル回避のポイント

開業届を提出したとしても、内容が誤っていたり提出期限を過ぎてしまっているような場合、後々大きなデメリットを被る可能性があります。トラブルを回避するためにも以下のポイントは押さえておきましょう。

ポイント 解説
屋号・職業欄の書き方 「Web制作業」「小売業」のようにわかりやすく具体的に記載
控えの受領印の取得 補助金や融資の申請時に必要な証明書になる。オンライン申請の場合はメッセージのハードコピーを保管
提出期限に注意 青色申告承認申請は開業日から2ヶ月以内に提出が原則
代理人による提出 委任状が必要。提出者の本人確認も求められる場合あり

開業届と一緒に検討すべき税務手続きについて

青色申告の届出は開業届と同時に提出しましょう

開業届提出と同時に完了しておきたい手続きの代表は青色申告の届出(正式名称:所得税の青色申告承認申請書)です。

関連サイト国税庁「A1-8所得税の青色申告承認申請手続

青色申告の主要な3つの特典は以下の通りで、高い節税効果も得られます。

  1. 所得金額から最高65万円を差し引くことができます。
  2. 配偶者等に支払う給与を必要経費に算入することができます。
  3. 赤字を前年や翌年の所得金額から差し引くことができます。(3年繰り越し 個人事業主の場合)

注意したいのは、青色申告の届出申請は開業から2ヶ月以内に行わないとその年度の申告時に特別控除枠を使えなくなることです。そのため、青色申告の届出申請は開業届と同時に手続きするようにしたほうが良いでしょう。

また、青色申告を行うためにはいくつかの要件を満たす必要があります。代表的なものが複式簿記による記帳です。複式簿記による記帳は一定の慣れが必要なうえに、本業利益にも直結しない作業ともいえます。こうした作業は税理士に委託することも検討してみましょう。

課税事業者になる?ならない?消費税の課税選択とインボイス制度の届出について

課税売上が1,000万円を超える見込みならインボイスの事前の届出を行いましょう。また、課税売上が1000万円以下であっても、海外向けの物販や、Youtubeなど主要な販路が海外の場合は国内で支払った消費税が還付される可能性があります。

消費税還付を受けるためにはインボイスの登録時に原則課税方式を選択する必要があります。インボイス制度の登録には青色申告の申請と比べてやや時間がかかるので早めの申請をこころがけ、極力開業届と同時に提出するようにしましょう。

関連サイト国税庁「インボイス制度について

個人事業主の節税&老後資金対策(小規模企業共済・国民年金基金)

自営業者は厚生年金がないため、会社員と比べると老後の年金受給額が低くなることが一般的です。そのデメリットを補うための制度として、小規模企業共済や国民年金基金といった年金制度を利用することができます。

小規模企業共済・国民年金基金ともに社会保険料控除の対象となるため、節税メリットが大きい自営業者向け制度ですが、開業届の控えの提出が加入時に必要になります。

関連サイト国税庁「No.1130 社会保険料控除

開業届提出後の会計・税務管理の手続きについて

会計ソフトの導入と帳簿付けをしましょう

事業主は、収入(売上)や経費を記録する帳簿を作成・保存する義務があります。効率的に行うには、会計ソフトの導入が欠かせません。

もちろん申告書自体は手書き・手計算による提出も可能ですが、会計処理にかかる労力を省力化したりe-Taxによる申告に対応するためには一定のコストこそかかるもののクラウド会計ソフトの活用が現実的な方法になります。代表的なクラウド会計ソフトには以下のようなものがあります。

ソフト名 特徴
freee(フリー) 自動連携・レポート機能が充実。初心者におすすめ。
マネーフォワード 家計簿アプリとの連携も可能。レシート撮影で簡単入力。
弥生(やよいの青色申告) 会計知識がある人向け。インストール型もあり。

それぞれ特徴に若干の差こそあるものの、青色申告にはしっかり対応しています。また、銀行・クレカ明細と自動連携で手間を削減できることに加え、複式簿記にも対応し、青色申告特別控除65万円の要件も満たしています。また、スマホ対応しているので、出先等で発生した経費も移動時間などを使って記帳することも可能です。

経費の分類と領収書管理について

日々の支出は正確に「経費区分」ごとに記録しておくことが基本です。誤分類は税務調査でのトラブルにつながるため注意しましょう。また証憑(しょうひょう)の添付・保存も忘れないようにしましょう。主な経費区分とその代表例は以下の通りです。

主な経費区分 内容の例
通信費 スマホ料金、Wi-Fi費用など
消耗品費 文房具、プリンターインク、名刺など
水道光熱費 電気・水道・ガス代(事業に使う部分のみ)
旅費交通費 電車賃、タクシー代、出張時の宿泊費など
会議費・交際費 顧客との打ち合わせに伴う飲食など

個人事業主の年間スケジュールと
申告・納税の流れ

個人事業主として必ず意識すべきなのが税務・行政手続きのスケジュールです。以下の表で年間の流れを確認しましょう。

時期 主な業務内容 備考
2月~3月 確定申告(白色・青色) e-Taxでの提出なら控除額アップ
6月 住民税の納付通知 普通徴収・特別徴収の選択あり
7月 所得税の予定納税(対象者のみ) 前年の所得税が15万円超の場合
9月 消費税の中間申告(課税売上1,000万円超の事業者) 消費税課税業者の条件を事前に確認
11月 所得税の予定納税(第2期分) 対象者は忘れずに納付

まとめ

開業届の提出は、個人事業主として正式にスタートするための重要な一歩です。必要書類を正しく揃え、提出方法やタイミングを押さえることで、後々のトラブルや損失を避けることができます。

また、しっかりした会計管理は、事業の信用にもつながります。早めの対応で、安心して本業に専念できる環境を整えていきたいですね。

廣瀬総合経営会計事務所は開業して30年以来、地域密着で様々な事業者様を支援してまいりました。多くの経験豊かな税理士が開業支援から税務申告、会計ソフト導入、記帳代行までトータルでお手伝いしております。決算・申告に関するご相談に限らず、経営全般に関する様々なご相談も承っていますので、お気軽にご相談ください。

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