個人事業主が開業届を出さないリスク・デメリットを
税理士事務所が解説

コラム, 新着情報

インターネットを活用したEコマース業の進展や勤務先での副業推奨などの流れもあり、小規模な事業主はもちろん、会社員であっても個人事業主としての顔を持つことができる時代になりました。

本記事では個人事業を始めるにあたり提出する書類「開業届」の基礎知識と注意点を創業30年超・個人事業主の開業サポートを行っている廣瀬総合経営会計事務所が解説します。

個人事業主と開業届の関係について

個人事業主の領域とは

個人事業主とは、法人を設立せずに自身で事業を営む個人のことを指します。町の電気屋さんや商店街の飲食店経営者など、古くからある業態で多くの人が個人事業主として活動しています。

一方で、インターネットの普及と定着を受け、最近では会社員の傍らスキルシェア分野でプログラマーとしての業務を受注したり、動画制作を請け負うなど新しいスタイルの個人事業主も誕生しています。

個人事業主は法人と異なり、設立の手続きが比較的簡単であり、税務申告も個人の所得税の枠内で行います。ただし、税法上の義務である開業届の提出は忘れてはいけません。

開業届を提出するタイミングについて

開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)とは、個人が事業を開始したことを税務署に報告するための書類です。開業届の提出はは税法上の義務であり、事業を開始した日から1か月以内に提出する必要があります。

個人事業主の税制面での立ち位置をクリアにし、正式に認められるためには開業届を提出することが必要です。また、税務上の特典である青色申告は開業届を提出して初めて認められるものであることは理解しておく必要があります。

関連サイト国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書

個人事業を開業するときの
必要書類と提出方法

個人事業を開業するときには開業届の紙一枚だけを税務署に提出しておしまいというわけではありません。個人事業の開業時には通常、以下の書類が必要になります。

開業届を提出する際に必要な書類

  1. 個人事業の開業・廃業等届出書(国税局のホームページからダウンロード可能)
  2. 青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合)
  3. マイナンバーカードまたは身分証明書の写し(オンライン提出の場合は電子データ)

書類が整ったら次は税務署への提出です。開業届は以下のいずれかの方法で提出することができます。

開業届の提出方法

税務署へ直接提出 最寄りの税務署へ訪問し、窓口で提出する方法
郵送で提出 必要書類を記入し、管轄の税務署へ郵送
オンライン提出 「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」を利用してインターネット上で提出する方法

近年、開業届の提出はオンライン(e-Tax)でも可能になっています。e-Taxを利用することで、税務署へ直接出向く必要がなく、スムーズに手続きを完了できます。ただし、マイナンバーカードや電子証明書の準備が必要になるため、事前に確認しておきましょう。

開業届を出さなかった場合のデメリット

開業届を出さずに個人事業を行った場合、様々なデメリットがあります。代表的なものを見ていきましょう、

その1青色申告ができない

青色申告とは確定申告の方法のひとつであり、定められた帳簿を作成し、その記録に基づき申告・納税を行う納税制度です。青色申告には様々な優遇策が設けられており、最大で65万円の控除が受けられるほか、赤字を3年間繰り越すことも可能になります。

しかし、開業届を提出していないとそもそも個人事業を営んでいることが税務署から見えません。そのため、青色申告も行うことができず、税制上の優遇が受けられません。開業届を出さないことで、税負担が増えてしまうことは避けたいですね。

関連サイト国税庁「No.2070青色申告制度

その2事業経費の計上が認められにくくなる

開業届を出していないと、税務署に事業として認められるのが難しくなります。その結果、確定申告時に経費として計上できる範囲が制限されてしまう可能性があります。

特に大きな出費(設備投資など)をしたとしても、それらを経費として認めてもらえないリスクが増えます。経費として認められなくなると所得が増えてしまい、税負担の増加につながる恐れがあります。

関連サイト国税庁「No.2210必要経費の知識

その3事業用の銀行口座やクレジットカードの開設が難しくなる

多くの個人事業主は個人の生活用口座とは別に個人事業用の銀行口座やクレジットカードを保有していることが一般的です。中でも、事業場の屋号を冠した銀行口座はビジネス上も信用度をアップさせる効果が高いとされています。

しかし、こうした個人事業主向けの銀行口座やビジネス用クレジットカードを開設する際、多くの場合提出した開業届を提示することが求められます。

開業届がないと事業用の口座が作れず生活資金と事業資金が混在した口座やクレジットカードを使うことになり、経理の管理が複雑になるだけでなく、長い目で見た場合には対外的な信用度も低くなってしまい、事業展開にマイナスの影響をもたらす可能性もあります。

その4補助金や助成金が受けられない

事業を行う際、自治体や国からの補助金や助成金を受けられる場合があります。中にはサポート対象を事業を始めたばかりの個人事業主に限定したものもあります。補助金や助成金は返済義務がないものも多く、上手に活用することで事業のスタートを円滑にする効果が期待できます。

しかし、開業届を提出していないと個人事業主として認められることは難しいため、こうした補助金・助成金の申請自体ができなってしまいます。

開業届を出さない最大のリスクは突然の「税務調査」

突然の税務調査が入るリスクと延滞税・加算税のリスク

「開業届を出していないんだから確定申告の必要もない。」
これは大きな誤解です。

開業届を出していなくても、収入がある場合は確定申告をする必要があります。おまけに開業届を出していない状態で確定申告を怠った場合、税務署からの調査が突然入るリスクが高まります。

特に開業届を出し忘れて1年以上経過した場合、過去の収入が無申告であったと見なされ、延滞税や加算税の対象にもなってきます。

開業届を出し忘れた場合の対処法は?

もし、開業届を出し忘れた場合はどうなるのでしょう。万一開業届を出し忘れていた場合でも、早めに提出すれば大きな問題にはなる可能性は低く、遡って提出することも可能ですのでご安心ください。

しかし、もしあなたが開業届を出していない場合は、速やかに提出することを強くお勧めします。

また、確定申告を行っていなかった場合は必要に応じて税務署に相談し、速やかに申告することも忘れないようにしましょう。ただし、遅れてでも開業届を出したからといって過去にさかのぼって青色申告の適用を受けることはできません。

青色申告は開業届に加えて青色申告承認申請書を提出してはじめて、翌年の確定申告から適用を受ける形になるからです。

関連サイト国税庁「A1-8所得税の青色申告承認申請手続

開業時のサポートや税務調査への対応は
廣瀬総合経営会計事務所にご相談ください

個人事業主として事業展開する場合、開業届を適切に提出することが忘れてはいけません。開業届を出さないと、税制上の優遇が受けられないだけでなく、経理上の問題や税務上のリスクも抱えることになります。

開業時の手続きや経理業務・税務対策に不安がある方は、専門家のサポートを受けることを検討してみてはどうでしょう。廣瀬総合経営会計事務所は開業して30年来、杉並区を中心に地域密着で様々な個人事業主様を支援してまいりました。

多くの経験豊かな税理士が記帳・確定申告をはじめとする個人事業主の確定申告に関する支援はもちろん、税務調査へのサポートも行っております。

また、各分野に精通した専門家とも連携し、経営に関して起こりうる様々な課題への対処方法についても一括サポート可能です。事業のスタートを確実にし、将来的なリスクを軽減するためのご相談も随時承っていますので、お気軽にご相談ください。

廣瀬総合経営会計事務所ご提供サポート個人のお客様向けサポート

事務所はJR西荻窪駅・徒歩1分の場所にあり、下記エリアを中心とした地域密着のサービスを展開しています。当事務所の対応エリアは以下の通りです。

廣瀬総合経営会計事務所・相続相談の対応エリア

  • 杉並区
  • 中野区
  • 三鷹市
  • 武蔵野市

初回利用者向けの無料相談会も開催しておりますので、まずは一度お気軽にお問い合わせくださいませ。

まとめ

  1. 開業届は事業開始から1か月以内に税務署に提出が必要(オンライン(e-Tax)でも提出可能)
  2. 開業届提出時に必要な書類は「開業届」「青色申告承認申請書」「身分証明書の写し」など
  3. 開業届の未提出はデメリットが大きい。出し忘れた場合は、早めに提出を

関連記事一覧