e-Taxが便利な3つの理由
確定申告はマイナンバー方式のe-Taxで! 

平成28年(2016年)1月から交付が開始されたマイナンバーカード(正式名称は個人番号カード)はマイナポイントの付与といった政府の旗振りもあり、総務省の発表では、2023年1月末のマイナンバー交付率は60.1%に到達しています。

前年同月と比較すると18.3%の大きな伸びになりました。今後マイナポイント付与期限の延長などの施策も予定されており、間もなく国民の4人に3人は保有するレベルになるとみられています。

マイナンバーカードは作成することへの不安感やデメリットにフォーカスされた意見も多く聞かれますが、こと確定申告を行う場合は便利かつ有利なことが多くあります。

本記事では便利で手軽になったマイナンバーカード方式のe-Taxによる確定申告について分かりやすく解説していきます。

平成31年(2019年)から便利になった確定申告
ーe-Taxで可能な2つの方式を比較ー

確定申告の方法には、

  1. 電子申告
  2. 郵送
  3. 管轄の税務署に持参

という3つの方法があります。今回のテーマのe-Taxはこのうち電子申告にあたるもので、正式名称は、「国税電子申告・納税システム」といいます。

e-Taxでは所得税、消費税、贈与税、印紙税、酒税などの申告や法定調書の提出、届出や申請などの各種手続をインターネットを通じて行うことができ、税金の納付も、ダイレクト納付やインターネットバンキング、ペイジー(Pay-easy)対応のATMを利用して行うことができます。

現行のe-Taxには2つの方式が存在します。その特徴やメリット・デメリットを比較してみましょう。

ID・パスワード方式のメリット・デメリット

e-Taxひとつめの方式は「ID・パスワード方式」です。ID・パスワード方式で確定申告を行う場合、マイナンバーカードとICカードリーダライタは不要です。

ただし、この方式でe-Taxを利用するためには、事前に税務署長へ届出をし、e-Tax用のID・パスワードの通知を受け、これらを管理・入力する必要があります。

税務署長への届け出や「ID・パスワード方式の届出完了通知」の発行を受けるためには、税務署職員による本人確認が必要となり、納税者自身が運転免許証などの本人確認書類を持ち、最寄りの税務署に足を運ぶ必要があります。

また、ID・パスワード方式はマイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応と位置付けられており、マイナンバーカードの普及に伴い、将来廃止になる可能性が示唆されています。

マイナンバーカード方式のメリット・デメリット

e-Taxふたつめの方式は「マイナンバーカード方式」です。マイナンバーカードを用いてマイナポータル経由又はe-Taxホームページなどからe-Taxへログインするだけで、より簡単にe-Taxの利用を開始することが可能です。

ID・パスワード方式で求められるような事前の税務署長へ届出や、e-Tax用のID・パスワードを取得し、管理・入力する必要もありません。令和2年1月6日からパソコンを持っていなくてもスマートフォンを利用した申告も可能になり、より利便性は高まったと言えるでしょう。

一方で、パソコン版で利用開始する場合、確定申告書等作成コーナー又はe-Taxソフト(WEB版)の「事前準備セットアップ」ツールをパソコンにダウンロードする必要があるなど、パソコン操作に不慣れな方などは少なからず労力を要する可能性があります。

ID・パスワード方式とマイナンバーカード方式はどちらがおすすめ?

ID・パスワード方式とマイナンバーカード方式にはそれぞれメリット・デメリットがあることをお伝えしてきました。

ただ、2つの方式を比べてみた場合、利便性・将来性の両面からみて、e-Taxの方式はマイナンバーカード方式に軍配が上がりそうです。

何よりもID・パスワード方式がマイナンバーカード普及までの暫定的な位置づけとされていることを考えると、今後のe-Taxはマイナンバー方式を念頭に置いた方がよいと言えるでしょう。

e-Taxが便利な理由その1自宅で手続き完結!提出可能期間は実質拡大。
還付スピードも大幅アップ

1.自宅にいながら申告手続きが完結する

2020年のコロナ渦以降、感染予防の観点から確定申告会場への入場制限が設けられていたり、税務署で行われる申告相談会などでも予約制が取られていたりします。

高齢者の方や基礎疾患がある方などにとっては外出することで、一定程度感染リスクが高まることは言うまでもなく、身体にハンデをお持ちの方などの場合は、申告会場に足を運ぶことすら大きな労力がかかることは間違いありません。

e-Taxの登場により、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成した電子申告データを自宅からデータで提出できるようになりました。確定申告書類をプリントアウトして郵送したり、税務署に持参する必要もなく、申告期間中は24時間いつでも提出可能です。

e-Taxを利用することで、自宅にいながら確定申告手続きが完了できることは大きなメリットといえます。

2.提出期間が実質1カ月以上拡大!1月4日から申告データの送信が可能に

書面による個人所得税の確定申告書の提出期間は例年2月16日~3月15日の期間とされています。

例年この時期の税務署は混雑しています。そのため土曜日に確定申告コーナーとして税務署以外にも臨時の会場が設けるなどして対応を行っています。

一方、e-Taxで確定申告を行う場合、1月4日から申告データの送信が可能です。そのため書面提出方式に比べ、混雑を避けられることはもちろん、実質1カ月以上も申告可能期間が拡大されることになり、余裕を持った手続きを行うことが可能です。

3.税還付の処理期間の大幅短縮(1カ月半→約3週間)で早期還付が実現

確定申告の結果、還付される税金がある場合、書面提出方式の手続きと比較してe-Taxは還付のスピードが速いというメリットがあります。

書面提出では還付まで1ヶ月~1ヶ月半の時間が必要なところ、e-Taxで申告すると、通常3週間程度で還付が処理されます。

令和4年度分確定申告で初めてe-Taxをやった方からも、従来の書面方式による提出開始前の1月28日にデータを送信したところ、還付金は2月17日に着金、つまり申告後20日程度で還付金が着金したという情報もありました。

特にフリーランス・個人事業主の方にとっては早く手元に資金が還付されるというのはとてもありがたい話といえます。

e-Taxが便利な理由その2e-Taxでは提出省略できる書類が多い

e-Taxで提出を省略できる書類の代表例は?民間伝送サービスとは?

所得税の確定申告書の提出をe-Taxを利用して行う場合、生命保険・損害保険の控除証明書に代表される「第三者作成書類」については、その記載内容を入力して送信することにより、これらの書類の税務署への提出又は提示を省略することができます。

これ以外にも、社会保険料控除の証明書や小規模企業共済等掛金控除の証明書なども提出省略可能ですので、フリーランス・個人事業主の方にとっては確定申告の省力化が期待できます。

逆の見方をすれば、書面提出方式で確定申告を行う場合はこれらの書類を紙ベースで添付することが必要なため、その作業に一定の労力を割かれることになります。

また、マイナポータルとの連携により、控除対象の保険会社などに対応している「民間伝送サービス」を利用することができ、取得した証明書のデータを確定申告書の各項目に自動的に入力することも可能です。こうしたマイナンバーカードの外部連携は年々拡大することが予想され、マイナンバーカード方式で確定申告をする大きなメリットとなる可能性が高いと言えます。

マイナンバーカードの健康保険証化で医療費控除の世帯内通算処理がとてもラクに

マイナンバーカードは健康保険証として登録することが可能です。

マイナンバーカードを健康保険証としてマイナポータルから登録しておけば、就職・転職・引越後も健康保険証としてずっと使えるようになるほか、高額な医療費が発生する場合でも、マイナンバーカードを保険証として使うことで、ご自身で高額な医療費を一時的に自己負担したり、役所で限度額適用認定証の書類申請手続きをする必要がなくなります。

もちろん確定申告に際しても、メリットがあります。

マイナンバーカードを健康保険証としてマイナポータルから登録しておけば、保険医療を受けた記録が参照できるため、領収証を保管・提出する必要がなく、簡単に医療費控除申請の手続きができます。

世帯全体としてかかった医療費を合算して申告する場合には、それぞれのマイナンバーカードを読み込ませることで合計額を確定申告書作成画面に反映させることが可能です。

e-Taxだからといって書類の保存義務がなくなるわけではない

書面提出が省略可能=保存義務がない、というわけではありません。源泉徴収票のように保管義務がないものもありますが、多くの書類は5年間の保管義務があります。

青色・白色申告者いずれの場合も提出省略が可能な書類であっても5年間保管し、税務署から提出や提示を求められた際には応じる必要があります。

個人事業主やフリーランスの場合、取引に用いた帳票を保管することには一定程度慣れていると思います。

一方で、初めて確定申告を行うような会社員の多くは白色申告で行うことが多いと思います。省略可能な書類だからといってうっかり証憑書類等を破棄することがないように注意しましょう。

e-Taxが便利な理由その3青色申告者には更なるメリット!
特別控除額が10万円アップ

2020年(令和2年)分の確定申告から変わった青色申告特別控除額

2018年(平成30年)度の税制改定で、青色申告の特別控除額が変更され、2020年(令和2年)分の確定申告以降、青色申告特別控除額は65万円から55万円に減額されました。

しかし、e-Taxで青色申告の手続きを行う場合、この特別控除額は減額されず65万円のままとされました。

たかが10万円の控除枠増?それでもやる価値あり!

一方、2018年(平成30年)度の税制改定で、誰にでも等しく適用される基礎控除の金額は38万円から48万円に増額されました。e-Taxで青色申告の手続きを行うことで得られる65万円控除とあわせ、10万円の控除枠拡大になります。

青色申告特別控除は現実のキャッシュアウトを伴わずにつくることができる数少ない控除枠です。たとえ10万円であっても時間と労力を費やすに値すると思います。

副業会社員はご注意を!
国税庁通達で事業所得・雑所得の線引きが明確化されました

マイナンバーカード方式のe-Taxで確定申告を行う方の中には副業を事業所得として申告している会社員の方もいると思います。2022年に国税庁から「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)が発出され、これまでややグレーゾーンとなっていた雑所得と事業所得の線引きが明確化されました。

具体的には、記帳・帳簿書類保存をしておらず、かつ収入300万円以下の人は、一律に雑所得として区分されることになりました。一方で、本業か副業かは問わず、記帳・帳簿書類の保存をしていれば、事業所得として区分できるようになり、給与所得等との通算も可能になります。

取引の記帳や申告をやっていないのは論外ですが、仮に意図的でなかったとしても誤った記帳・申告をしてしまった場合はペナルティを課される危険性もあります。今回の通達で、副業を頑張る会社員にとって確定申告のハードルは少し上がったかもしれません。

確定申告には日々の記帳から申告に至るまでの様々なプロセスがあります。こうしたプロセスを日々相談できるパートナーがいると、より事業そのものに傾注することが可能になり、事業拡大を図ることができます。

廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、マイナンバーカード方式のe-Taxに対応し、日々の記帳代行業務から個人・法人の税務申告、会社設立などのサポートをトータルで行っております。また、各分野に精通した専門家とも連携し、税金に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスまで一括サポート可能です。

当事務所の対応エリアは以下の通りです。

  • 杉並区
  • 中野区
  • 三鷹市
  • 武蔵野市

初回利用者向けの無料相談会も開催しておりますので、まずは一度お気軽にお問い合わせくださいませ。