タワマン節税は終了?法改正による相続税への影響を解説

「タワーマンションの購入で相続税を節税できる。」

こんな触れ込みのタワーマンションを相続対策として購入した人もいるかもしれません。中には節税を通り越した租税回避行為とみなされるような事案もあり、今回国税庁の大ナタが振るわれることとなりました。

国税庁は2024年1月以降のマンションの相続税評価額の算定ルールを直します。見直しに向け、2023年8月の意見公募手続き(パブコメ)を経て、10月には改正後の通達が国税庁サイトに公表されました。

この記事では評価方法の改正によって揺れ動くタワーマンション節税を取り巻く現状について分りやすく解説していきます。

タワーマンション節税(タワマン節税)とは

タワーマンション節税(タワマン節税)とはどんな仕組み?わかりやすく解説

タワーマンションの高層階と低層階にはそもそも価格差があり、高層階ほどプラミアムが付くため売却したり賃貸に供した場合でも低層階の同物件に比べ高い価値評価になります。

一方で、建物の評価額(固定資産税評価額)は同じマンションであれば低層階と高層階でも同一である上に、1戸に与えられる土地の持ち分評価が少なくなります。

そのため高層階の物件には「購入価格」と「相続課税評価額」に大きな乖離が生まれる一方で、相続税の計算上はその市場価値は考慮できないという側面がありました。

こうした相続税評価と実勢価格の乖離に着眼し、相続対策として生前にタワマン高層階を購入し、相続させることで、相続税評価額を実勢価格の3割程度に圧縮することが可能になってしまっていました。これがタワマン節税と呼ばれるものです。

2022年4月タワマン節税を巡る
最高裁判決のインパクト

過去にもタワーマンションを活用し、相続財産の評価額大幅に引き下げる方法で節税を図るなど、本来の制度趣旨を大きく逸脱するようなケースに対しては、国税庁は租税回避行為として対決姿勢を明らかににしていました。

2022年4月にあった最高裁の判決では、原告である相続人が原則通り路線価などを基に相続したタワーマンションを約3億3000万円と評価し、購入時の借り入れもあわせて相続。タワーマンションの評価額と借入を相殺して相続税を0円と申告した事例では、国税側は例外規定を発動しタワーマンションの相続評価額を否認。国税不服審判を経た後に裁判へ発展することとなり、注目を集めていました。

裁判開始から5年半の月日を経て、2022年4月の最高裁判所の最終判断が下ります。

最高裁では国税庁側の主張が認められ、原告側(相続人)の上告は棄却され、争点となったマンション評価は不動産鑑定に基づき実勢価格に近い価格で再評価され、原告側(相続人)には約3億円の追徴課税が課せられることになったのです。

元々0円としていた相続税が3億円となったこと、また土地評価の絶対的ルールとも言える路線価における評価が否認されたことは大きなインパクトがあり、直接的ではないにせよ今回の法改正の引き金になったともいえます。

今回の改正通達はタワマン節税に代表されるような行き過ぎた租税回避行為には強い姿勢で臨む方向性を示したものであるのと同時に、タワーマンションを含む居住用区分住宅については、より実勢価格に近い相続税・贈与税評価とする方向性を示したものと言えます。

2024年1月施行
「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」
を読み解く

マンションの相続財産評価額を決める要素は4つ

今回通達改正で示された評価方法は、マンションの相続財産評価額を一戸建て同様、最低でも時価の6割程度になることを目指したもので、実勢価格との差を「乖離率」として路線価方式で算出された評価額を修正する仕組みです。

乖離率の計算の要素になるものは4つあります。

乖離率計算における「4つの要素」

内容 計算方法
築年数 マンションが建築されてからの経過年数。築年数×(-0.033)で求める。
総階数指数 物件の所在階数で評価を修正する。(総階数÷33)×0.239で求める
住戸の専有部分の所在階 住戸の「敷地利用権」の面積を「専有部分」の面積で割ったもの。住戸の専有部分の所在階×0.018で求める
住戸の敷地持分狭小度 マンション一室の専有面積/一室の敷地利用権の面積で敷地持分極小度を求め、敷地持分極小度×(-1.195)で求める。

算出された乖離率が「1」未満の場合と、「3分の5」(約1.67)を超えた場合について、相続税評価額が以下の算式で補正されます。

補正率の計算式

条件 補正率
評価乖離率が「1」未満の場合 補正率=評価乖離率
評価乖離率が「3分の5」超の場合 補正率=評価乖離率×60%

結果として、都心部にある狭い土地面積の上に建った高層マンションは多くの場合従来よりも相続財産評価額が上がることになります。

一方で、評価乖離率が「1」~「3分の5」の範囲におさまっている場合、すなわち一般的な居住用マンションであれば補正は行われないため、従来の評価額のままになるケースが多くなりそうです。

このことからも、今回の通達改正はマンション全体に対して適用されるルールであるものの、やはりタワマン節税に焦点を当てた改正であることが読み取れます。

マンションの相続財産評価額は国税庁リリースの計算用ツールで簡単に計算

計算根拠が示されたとはいえ、実際に評価額を計算するのは骨の折れる作業です。

パブコメの中でも計算シートのリリースを求める声も多くあったことから、国税庁も簡便にマンションの評価額を算出するための計算シートをリリースしました。実際の相続税の申告に際してはこのシートに入力・印刷したものを申告書に添付することになります。

タワマン節税の規制見直しで
タワーマンションと相続税を取り巻く環境はどう変わる?

行き過ぎた租税回避行為には厳しい目が向けられる

今回の通達改正を経て、タワーマンションを使った過度な節税行為については国税庁も厳しい姿勢で臨むことはほぼ間違いないでしょう。

特に相続発生直前に銀行からの多額の借入を行って駆け込みでタワーマンションを購入したようなケースは、新ルール通りの相続税申告・納付を行ったとしても税務調査等のリスクは高くなることを覚悟した方がよいでしょう。

2024年1月以降は全てのマンションの相続・遺贈が新ルールの対象となる

今回の法改正は2024年1月か施行とされていますが、たとえ改正通達以前のマンション購入であったとしても、2024年1月以降に発生した相続・遺贈については新ルールによって計算されることとなります。

そのため、既に過去に購入したマンションであっても今回の法改正の影響は受けると考えておいた方がよいでしょう。

居住用の不動産の評価減のために使える特例は引き続き有効

一方で、不動産には生活の拠点・基礎、という考え方もあります。

一般的な居住用の住宅は引き続き路線価方式で求められた相続財産評価に対する補正は小さい水準にとどまるものと想定されているほか、評価額を引き下げることができる様々な特例も引き続き活用できます。

代表的なものとして、小規模宅地の特例があります。一定の要件を満たす宅地等については評価額を最大80%引き下げることで相続税の負担を軽減できるようになるので、改正通達後も有効に活用したい特例と言えます。

相続対策・不動産評価は当事務所にお任せください

タワーマンションに限らず不動産の相続財産評価は様々な特例等を用いることも可能であるため、専門的な知識や経験が必要です。また、不動産は一般に評価額が大きく、評価額の計算を誤ると相続税の計算も大きく狂ってしまう恐れがあります。

これから相続対策としてタワーマンションをはじめとする不動産購入を検討しているような場合は、綿密なシミュレーションが欠かせません。そのため、不動産の評価は相続税申告の実績が豊富な税理士に相談するのが安心できるでしょう。

廣瀬総合経営会計事務所は「杉並・中野相続サポートセンター」の運営母体として、これまで2500件を超える相続税申告をお手伝いしています。

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これから相続対策を検討する場合はもちろん、既に相続が発生しており申告の方法を知りたいなど相続に関する疑問やお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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