こんな不動産は要注意!
相続で揉めやすい不動産ベスト3

「相続をめぐるトラブルは富裕層の話であり、うちには関係ない。」本当に相続をめぐるトラブルは富裕層だけの話なのでしょうか?

実際には相続をめぐるトラブルは、遺産総額の金額の大小関係なく発生しており、中でも相続財産に不動産が多く含まれる場合、相続時に親族間で揉める可能性が一気に上がると言われています。

この記事では相続時にトラブルに発展しやすい不動産のタイプと、親族間のトラブルを避けつつ相続手続きを円満に進めるための方法について分りやすく解説していきます。

今回のポイント

  1. 相続でもめる件数はどのくらいあるの?
    1. 令和3年度遺産分割事件数と調停件数
    2. 遺産総額が小さいと揉めない?遺産総額1,000万円以下の事件の数
    3. 相続財産に不動産が占める割合が多いと揉め事に発展しやすい理由
  2. 相続時に揉める不動産のタイプ・ベスト3
    1. 第一位「親と同居の長男VS別居の長女 相続財産に占める不動産の割合が大きいケース」
    2. 第二位「この不動産はどのくらいの価値があるの?不動産の評価方法で揉める」
    3. 第三位「先祖代々の実家・山林・農地 利用価値が低い不動産の押し付け合いで揉める」
  3. 相続手続きを円満に進めるために今からやっておくべきこと
    1. 親子間・兄弟間の日ごろのコミュニケーションこそ円満な相続の最大の秘訣
    2. 遺言書を作成しておく
    3. 生命保険を活用して代償分割資金を確保しておく
  4. 円満な相続を実現するためには専門家のアドバイスが必要?

相続でもめる件数はどのくらいあるの?

令和3年度遺産分割事件数と調停件数

令和3年度に裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の数は13,447件で、令和2年度に比べ約5%増加しました。

データ引用元裁判所「令和3年司法統計年報3家事編

ここ数年は若干の増減はあるものの、毎年12,000件を超える水準の遺産相続にまつわるもめ事が裁判所に持ち込まれています。

持ち込まれた件数の全てで認容や調停に至ることは難しく、実際に認容・調停が成立した件数は6,996件と、約半数程度にとどまっており、遺産分割協議をめぐるもめ事の解決は一筋縄ではいかないことが良くわかります。

遺産総額が小さいと揉めない? 遺産総額1,000万円以下の事件の数

令和3年度に実際に認容・調停に至った6934件のうち、遺産総額1,000万円以下のケースは2,279件でした。ここから3件に1件は遺産総額1,000万円以下の事件であることが読み取れます。

遺産の総額が大きいから揉め事に発展する、小さいから揉めない、とは必ずしも言い切れず、額の大小を問わず揉めるときは揉めるというのが実情といえます。

相続財産に不動産が占める割合が多いと揉め事に発展しやすい理由

特に不動産が遺産に占める割合が多い場合は揉め事に発展する可能性が大きくなります。

実際、調停認容に至った事件6934件のうち、現金・動産の件数は1,217件にとどまるのに対し、土地・建物の方が1,635件と上回っており、相続時のもめ事では、不動産がキーワードなっていることがわかります。

相続時に不動産が揉め事の原因になりやすい理由は、不動産の価格の決まり方と分割のしづらさにあります。

現金や有価証券が評価・分割しやすいのに比べて、不動産は様々な評価方法があることに加え、分割するとその価値が低下する可能性もあるため、その取扱いについて相続人間で揉め事の火種になる可能性が高くなってしまうのです。

相続時に揉める不動産のタイプ・ベスト3

第一位親と同居の長男VS別居の長女 相続財産に占める不動産の割合が大きいケース

下の家系図のように、特定の兄妹が被相続人と同居しており、他の相続人が別世帯を構えているケースで、相続財産の多くがこの土地・建物に集中しており、現預金が少ない場合は特に注意が必要です。

被相続人の保有資産
  • 土地・建物:3000万円
  • 現預金:800万円
法定相続人 2名(長男及び長女)
遺言・相続人の希望など
  • 遺言はなし
  • 長男は引き続き被相続人(母親)と同居していた自宅に住み続けたい
  • 長女は法定相続割合通りの遺産分割を希望している

このケースでは、相続財産は不動産と現預金合わせて3800万円と基礎控除の範囲内であることや、不動産については小規模宅地の評価減も使えるため、相続税の納税自体は発生しません。

遺言が残されていなかった場合、法定相続割合通りに長男・長女がそれずれ1/2ずつ分けて相続し、1900万円を長男・長女それぞれが相続することになります。

しかし、不動産が相続財産の多くを占めるため、住宅を長男が相続し、引き続き居住するためには長女に相続放棄をしてもらうか、法定相続割合以下の遺産分割を受け入れる内容の遺産分割協議書を整えなくてはなりません。

仮に長女が法定相続割合通りの遺産分割を主張した場合、長男は現預金の全額800万円を渡すと同時に1100万円の現金を長女に渡さなくてはなりません。

長男側の手元にまとまった資金が無い状態で、長女が法定相続割合通りの遺産分割を主張した場合には、現金を確保するためにやむなく自宅の売却を迫られるなど、遺産分割を巡り、長男・長女間でもめ事に発展する可能性が高まります。

第二位この不動産はどのくらいの価値があるの?不動産の評価方法で揉める

不動産(土地)の価格には「時価(実勢価格)」「公示地価(公示価格)」「相続税評価額(路線価)」「固定資産税評価額」等、様々な評価による価格があります。

このように、不動産の評価額は一物四価ともいわれ、様々な価格が存在し、実際に評価をするにも専門的な知識が必要です。不動産を相続する相続人からすれば、不動産の評価が低くなれば、不動産以外の現預金等で相続できる額が増える可能性が高まります。

一方、不動産を相続しない相続人からすれば、不動産の評価が高くなれば、自身の現預金の取り分が増える可能性があります。

そのため、不動産を相続する側の思い(不動産を低く評価したい)と、不動産を相続しない側の思い(不動産を高く評価したい)が衝突し、不動産の評価額を巡る揉め事に発展する可能性が高くなります。

第三位先祖代々の実家・山林・農地 利用価値が低い不動産の押し付け合いで揉める

時折テレビで見かける「ぽつんと一軒家」ですが、もし実家や山林・農地が人里離れたような場所にあるような場合、相続発生時に実家の押し付け合いに発展する可能性があります。

これは、こうした「ぽつんと一軒家」は相続したとしても売却・賃貸といった利活用が難しいことに加え、相続した人が固定資産税の負担をはじめ、維持管理の負担まで強いられてしまうことが押し付け合いに発展しやすい理由です。

もちろん相続放棄という事も可能ですが、相続放棄した場合は現預金等の相続もすることもできなくなってしまいます。

さらに、いざ相続手続きの段になって相続した実家や山林が実は亡くなった祖父や曾祖父の名義のままで放置されているケースだと分ったような場合はより複雑さを増します。長年登記が放置されていた不動産は、多くの関係者の共有状態になっている可能性があるからです。

共有状態の不動産を相続する時は、名義変更のために関係者を集めて話し合い、全員から同意を得た上で遺産分割協議書に実印をもらう必要があるなど多くの労力を使うことになります。

このように、祖父の兄弟や子供たち、さらには孫など権利を持つ人がネズミ算式に増えてしまった結果、複雑な所有形態になってしまっていることも不動産の押し付け合いに発展しやすい原因と言えます。

これまで、不動産の相続登記は義務ではなかったため、故人名義のまま放置されるケースもありましたが、2024年4月からは、過去の相続不動産も含め、原則として3年以内の相続登記が義務化されます。

違反すれば10万円の過料を科される可能性もありますので、もし相続財産の中に何の手続きもしていない「ぽつんと一軒家」がある場合は注意が必要です。

相続手続きを円満に進めるために
今からやっておくべきこと

親子間・兄弟間の日ごろのコミュニケーションこそ円満な相続の最大の秘訣

円満な相続を実現するためには親子間・兄弟間の日ごろのコミュニケーションが何より重要なのは言うまでもありません。

もし、親子間・兄弟間のコミュニケーションがなく、遺言等の準備もないまま相続が発生すると、ちょっとした誤解や勘違いから衝突が生まれ、話がこじれてしまうことになりかねません。

しかし、相続に関しては「家族(親子・兄弟)だから話やすいこと。家族だから話しにくいこと。」が存在するのもまぎれもない事実です。

だからと言って親子・きょうだい間で相続に関する話題を遠ざけていると、財産を残す側は「「うちの家族に限っては大丈夫。」と考え、財産を受け継ぐ側からは「当然、相続対策をしているのだろう。」という根拠のない思いを抱えたまま時間だけが過ぎてしまうこともあります。

できるだけコミュニケーションをとる機会を増やすことでこうしたトラブルを未然に防げる可能性は大きく高まります。少しずつでもいいので、日ごろから親子間・兄弟間で相続に関する話題を持つようにするのがよいでしょう。

遺言書を作成しておく

いかに日ごろのコミュニケーションが円満であったとしても、ちょっとした行き違いから揉め事に発展してしまうのが、相続の難しいところです。

実際に、裁判所での認容・調停に至った件数の3件に1件が遺産総額1,000万円であることからも分るように、相続財産が少ないからと言って親族間の揉め事に発展しないとは言い切れないのが実情です。

スムーズな相続を実現するためには、やはり遺言書が欠かせません。

ただ、遺言書といっても、自筆証書遺言(自分一人で書く遺言)では、書式を誤った結果無効になってしまったり、内容が具体的でないため効果が認められないリスクが高まります。

それに対し、公正証書遺言は、公証人の他にも証人を2人つけなければならず、遺言者の意思能力に疑いをかけられるリスクも少なくなります。また、証人には税理士や弁護士、司法書士といった専門家が選ばれることが多く、また公証人を務める人も元法曹経験者から選任されていますので信用度が高く無効になりにくい遺言書だと言えます。

生命保険を活用して代償分割資金を確保しておく

生命保険金には非課税枠があることに加え、受け取った保険金は受取人固有の財産になるため、他の相続人に代償分割資金を渡すための原資を計画的に準備することができます。

特に、相続財産に不動産が占める割合が大きな場合など、生命保険の活用を検討する余地は大きいと言えます。ただし、加入方法や商品選択を間違えると思った効果が得られなくなる可能性がありますので注意が必要です。

円満な相続を実現するためには
専門家のアドバイスが必要?

相続発生時に親族間で揉め事が生じると、遺族は死を悼む暇もないままに対立関係になり、最悪の場合法的紛争に発展していくことになります。

こうした親族間の揉め事を避けるためにも、公正証書遺言の準備や生命保険の活用といった事前の対策を検討しておくことが重要なのは言うまでもありません。

しかし、何から着手していいのかわからない、という方が多いのも事実です。これから相続について考える、既に対策を検討しているが他にも意見を聞きたい、といったような場合は、相続に精通した専門家からのアドバイスを仰ぐことも検討してみるといいでしょう。

廣瀬総合経営会計事務所には経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、相続に関する様々なご相談に加え、申告から納税に至る一連の流れをサポートしています。

また、各分野に精通した外部の専門家とも連携し、相続に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法についてもサポートできる態勢が整っています。

初回利用者向けの無料相談会も開催しておりますので、相続に関する疑問やお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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