高齢者施設の選び方
老人ホーム・グループホーム
サービス付き高齢者向け住宅を解説

「終の棲家」と言われたら、どんな場所を思い浮かべるでしょう。その昔は自宅が終の棲家の中心でしたが、いまは高齢者施設が終の棲家になるケースも増えてきています。
高齢者施設には、老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム、高齢者専用賃貸住宅、サービス付き高齢者向け住宅などたくさんの種類があります。名前は聞いたことはあるけれど、その違いまではよく分からないという方が多いのではないでしょうか。
この記事では高齢者施設への入居を検討している人自身はもちろん、親の介護をどうすべきか考えている人にも参考になる情報を、相続に強い税理士事務所が解説していきます。
高齢者施設の選び方におけるポイントとトレンド
老人ホーム選定のポイントやトレンドは、社会の高齢化や多様なニーズに応じて変化しています。近年では、従来の介護に加えて、快適な生活や個別のニーズに対応できる施設が注目されています。
高齢者施設選びの重要なポイントは「介護・医療体制の質」と「立地・環境」
高齢者施設選びで最も重要なポイントは、介護や医療の質です。家族の状況や将来的な健康状態を見据えて、必要なケアが施設で提供されるかを確認しましょう。
また、自宅や家族の住まいからのアクセスや、周辺環境も重要な要素です。通いやすさ、家族との面会のしやすさは安心感につながりますし、外出することで社会との接点を持ち続けたい場合などは、商業施設までの距離感なども重要な要素になります。
以下に示したポイントを他の施設と横比較するなどして施設選定の材料にするとよいでしょう。
高齢者施設・選び方のポイント
- 介護スタッフの配置状況、資格、経験年数
- 医師や看護師の常駐体制・巡回体制
- 認知症や終末期ケアの対応状況
- 交通アクセスの良さ(駅やバス停からの距離 親族の住居との距離・所要時間)
- 自然環境や近隣の施設(公園、商業施設など)
高齢者施設の入居にかかる費用について
高齢者施設選定に際し、費用面の問題は切っても切れないテーマです。また、費用面でのトラブルは決して少なくありません。
高齢者施設の入居費用は初期費用(入居一時金)と毎月の利用料をチェック
高齢者施設へ入居する費用は、初期費用(入居一時金)と毎月の利用料(生活費・介護費用)に分けられます。一般的な高齢者施設の入居期間は4~5年程度といわれており、初期費用と月額費用のバランスを考え、経済的に無理のない範囲で長期的な視点で判断すると同時にその情報を家族間でも共有しておくことが重要です。
入居時の一時金に関するトラブルには要注意
注意したいのは入居時の一時金です。民間の有料老人ホームなどでは、入居時に一時金として数百万円から数千万円を支払うケースがあります。この入居一時金は、通常「長期利用を前提にして償却」されるため、短期間で退去する場合など、一時金の返還額が少なかったり、返還されなかったりするトラブルが発生することがあります。
また、施設が破産した場合、一時金が返還されないリスクも考えられます。
追加費用が発生する可能性もあらかじめ確認を
月々の費用(生活費、介護費、管理費など)は、契約時に決まった額以外に追加費用が発生するケースがあります。例えば、介護度が上がった際の追加料金や、サービス内容の変更による費用増加などがその代表例ですが、トラブルを避けるためにこうした費用は必ず書面で確認しましょう
高齢者施設の生活支援やサービス内容は実際に体験して確認しましょう
日常生活をどれだけサポートしてくれるか、介護以外のサービス(食事、レクリエーション、家事サポートなど)の充実度、施設の雰囲気なども高齢者施設選定の重要なポイントです。
サービス内容確認のポイント
- 食事の質やバランスは自分に合うか
- レクリエーションやアクティビティの種類が豊富に用意されているか
- 施設内での入居者同士の交流の機会はあるか
- スタッフの対応や雰囲気はよいか
- 実際の居住スペースや共用施設の清潔さ
こうした内容は見学や体験入居を活用して実際に施設で生活してみることで、実際の雰囲気やスタッフの対応を確認しておくのが良いでしょう。
高齢者施設を選ぶなら公的施設?それとも民間の施設?
公的な高齢者施設の種類と特徴
公的な高齢者施設は、費用が抑えられている点が大きな特徴であり、所得に応じた負担軽減制度も整備されています。また、サービスの質や介護体制が一定の基準に基づいているため、安心して利用できる反面、待機者が多く入居が難しいこともあります。
ここでは、各施設ごとの特徴をくわしく解説していきます。
特別養護老人ホーム(特養)の特徴
特別養護老人ホーム(特養)は、日本の高齢者介護施設の中核を担う存在です。全国に約8,000施設が設置され、約54万人が利用しており、高齢者施設の中で最も利用者数が多い施設形態となっています。
特養は、常時介護が必要な要介護3以上の高齢者を対象としており、医療や介護のニーズに24時間体制で対応しています。大きな特徴として、比較的安価で利用できる点が挙げられ、月額費用は5万円~15万円程度となっています。この費用は利用者の所得や介護度によって異なり、低所得者には様々な減免制度が適用されます。
また、特養は長期的な入居が可能であり、終の棲家として選ばれることも多い施設です。しかし、需要の高さから入居待ちの状況が常態化しており、申込みから実際の入居までに数ヶ月から数年待つケースも少なくありません。このため、早めの情報収集と申込みが推奨されています。
- 全国で約8,000施設、約54万人が利用しており、最も利用者数が多い。
- 常時介護が必要な要介護高齢者(要介護3以上)が対象。比較的安価で利用でき、長期的な入居も可能。
- 月額費用は5万円~15万円程度(所得や介護度によって異なる)
- 入居待ちが非常に長い場合があり、すぐに入居できないことが多い。
介護老人保健施設(老健)の特徴
介護老人保健施設(老健)は、リハビリテーションを中心に据えた介護施設です。病院での治療を終えた後、すぐに自宅での生活に戻ることが難しい高齢者のための中間施設として機能しています。
老健の対象者は要介護1以上の認定を受けた高齢者で、医師や看護師が常駐し、専門的な医療ケアとリハビリテーションを受けながら日常生活の介護サービスを提供しています。在宅復帰を目指した支援が特徴的です。
利用料金は月額7万円~15万円程度で、利用者の介護度や必要な医療的ケアの内容によって変動します。特別養護老人ホームと同様に所得に応じた負担軽減制度も利用可能です。
老健の大きな特徴として、入居期間が短期間を基本としている点が挙げられます。原則として3~6ヶ月程度の入居を想定しており、在宅復帰や他施設への移行を前提としているため、長期間の継続入居は基本的に想定されていません。定期的な状態評価を行いながら、次の生活の場への移行を支援する施設です。
- リハビリを中心とした施設で、病院から退院後自宅に戻るための中間施設。
- 要介護1以上の認定を受けた高齢者が対象で、医療ケアやリハビリを中心に、日常生活の介護サービスを提供。
- 月額費用は7万円~15万円程度(介護度や医療的ケアにより異なる)
- 短期間の入居が基本。長期間の入居は基本的にできない。
軽費老人ホームの特徴
軽費老人ホームは、比較的自立した生活を送ることができる高齢者を対象とした公的な住居施設です。身の回りのことが基本的に自分でできる方が、安心して生活できる環境を提供しています。
この施設では、食事の提供や生活相談、緊急時の対応など、日常生活における軽度の支援サービスを行っています。しかし、特養や老健と異なり、介護サービスは基本的に提供されていません。必要な場合は外部の介護サービスを利用することになります。
利用料金は月額5万円~10万円程度と比較的負担が少なく設定されており、低所得の高齢者でも安心して生活できるよう配慮されています。ただし、施設によって提供するサービス内容や設備に違いがあるため、費用にも幅があります。
軽費老人ホームの重要な特徴として、入居者の状態が変化して本格的な介護や医療的ケアが必要になった場合は、施設での継続利用が難しくなり、特養などの介護施設へ転居する必要が生じることもある点が挙げられます。このため、将来的な生活プランを考慮した上での選択が重要となります。
- 自立した生活ができる高齢者を対象とした公的施設。軽度の生活支援を提供。食事の提供や日常生活のサポートを行いますが、介護サービスは提供されない。
- 月額費用は5万円~10万円程度
- 介護や医療処置が必要になると転居が必要ことも。
養護老人ホームの特徴
養護老人ホームは、経済的な理由や家庭環境などの社会的要因により、自宅での生活を継続することが困難な高齢者を対象とした福祉施設です。主に生活保護を受けている方や低所得の高齢者が入居しており、安定した住まいと基本的な生活支援を提供しています。
この施設の大きな特徴は、介護保険制度の対象外施設であるという点です。医療的な介護サービスは原則として提供されず、日常生活上の支援が中心となります。身の回りのことが基本的に自立してできる方が対象となっています。
利用料金は非常に低く抑えられており、月額数千円~1万円程度と他の高齢者施設と比べて格段に安価です。また、利用者の収入状況に応じて自己負担額が決定される仕組みとなっており、経済的な負担を最小限に抑えられるよう配慮されています。
ただし、入居者の状態が変化して本格的な介護が必要になった場合には、養護老人ホームでの継続入居が困難となり、特別養護老人ホームなどの介護施設への転居が必要になることがあります。このため、将来的な健康状態の変化も考慮した生活設計が重要です。
- 経済的な理由や家庭の事情で自宅での生活が困難な高齢者向けの施設で医療的な介護はなく、介護保険の対象外。
- 月額費用は数千円~1万円程度。収入に応じて自己負担額が決まる
- 介護が必要になった場合、他の施設へ移る必要がある。
民間が運営する高齢者施設の種類と特徴
民間が運営する高齢者施設は、多様なニーズに応えるために様々なサービスを提供しています。食事や居室、アクティビティなど利用者の生活の質や自由度を重視した柔軟な対応や個別化されたサービスが特徴で、入居者の介護度や生活スタイルに応じて様々な選択肢が用意された施設が多くあります。
介護付き有料老人ホームの特徴
介護付き有料老人ホームは、民間事業者が運営する介護サービス付きの居住施設です。介護保険制度が適用される特定施設入居者生活介護の指定を受けており、入居者は施設内で必要な介護サービスを受けることができます。
この施設では、食事、入浴、排泄の介助といった基本的な介護サービスが提供されるほか、多くの施設では医療機関との連携体制が整えられています。また、入居者の生活を豊かにするためのレクリエーションや外部活動なども積極的に取り入れられており、快適な生活環境を提供しています。
費用面では、他の高齢者施設と比較して高額となる傾向があります。入居時には入居一時金として数百万円から数千万円が必要なケースが多く、さらに月額利用料も15万円~50万円程度と幅広く設定されています。これらの費用は、施設の立地条件や建物の新しさ、提供されるサービスの質や内容、居室の広さなどによって大きく異なります。
介護付き有料老人ホームは、経済的な余裕がある方が、より質の高いサービスと環境の中で老後生活を送るための選択肢となっています。
- 介護保険が適用される施設。入居者は必要な介護サービスを受けられる。
- 食事、入浴、排泄の介助などの介護サービスが基本で、医療連携体制も整えられていることが多い。レクリエーションや外部活動なども提供される施設が多い。
- 初期費用として数百万円~数千万円、月額費用は15万円~50万円程度(施設の立地やサービス内容により異なる)
住宅型有料老人ホームの特徴
住宅型有料老人ホームは、生活支援サービスを中心とした民間の高齢者向け居住施設です。この施設の最大の特徴は、介護サービスを施設自体では提供せず、必要に応じて外部の訪問介護事業所などを利用する点にあります。そのため、入居者は自分のペースで自由度の高い生活を送ることができます。
入居対象者は幅広く、自立した生活ができる高齢者から要支援・要介護認定を受けた方まで受け入れています。基本的に自分で身の回りのことができる方や、外部サービスを利用しながら生活できる方に適した環境です。
提供されるサービスとしては、食事の提供や居室の清掃、洗濯などの生活支援が中心です。また、健康相談や緊急時の対応といった安心のためのサポート体制も整えられていますが、直接的な介護サービスは含まれていません。
費用面では、入居時に数百万円~数千万円の初期費用が必要となるケースが多く、月額費用は10万円~30万円程度と設定されています。これらの費用は施設の立地条件や建物の質、提供されるサービス内容によって異なります。
- 生活支援が中心の施設で、介護サービスは外部の訪問介護事業所などを利用。生活面の自由度が比較的高い
- 自立した高齢者から要支援・要介護者まで入居可能。
- 食事や清掃などのサービスを提供。健康相談などのサポートはあるが、介護サービスはなし。
- 初期費用は数百万円~数千万円、月額費用は10万円~30万円程度。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の特徴
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、2011年に創設された比較的新しい高齢者向け住宅の形態です。基本的には民間の賃貸住宅でありながら、生活相談や安否確認などの見守りサービスが付帯している点が特徴的です。
サ高住は、自立した生活が可能な高齢者から要介護者まで幅広く入居可能ですが、施設自体では介護サービスを提供していません。入居者は必要に応じて外部の訪問介護や通所介護などの介護保険サービスを自由に選択して利用することができます。
費用面では、一般的な賃貸住宅と同様に入居時に敷金などとして数十万円程度の初期費用が必要で、月額費用は家賃とサービス費を合わせて10万円~20万円程度となっています。公的な補助を受けて建設されたものも多く、比較的リーズナブルな価格設定の施設も少なくありません。
ただし、入居者の状態が変化して重度の介護が必要になった場合には、サ高住での生活継続が難しくなり、特別養護老人ホームなどの介護施設への転居が必要になるケースもあります。バリアフリー設計や緊急通報システムなどが整備されている点は安心ですが、終の棲家としての機能には限界があることも理解しておく必要があります。
- 生活支援や見守りサービスが付帯した高齢者向けの賃貸住宅。必要に応じて外部の介護サービスを利用可能。
- 初期費用は数十万円(敷金など)、月額費用は10万円~20万円程度。
- 重度の介護が必要な場合は他の施設に移らなければならない場合がある。
高齢者施設を取り巻く現状と将来見通し
増え続ける65歳以上人口と要介護認定者数
2023年時点で、65歳以上人口は約3600万人いるといわれ、総人口に占める割合は約29%に達しています。日本は世界有数超高齢社会であり、4人に1人以上が65歳以上という状況です。
今後高齢化はさらに進行し、65歳以上人口は2025年には約3,700万人(総人口の約30%)、2040年には約3,900万人(総人口の約35%)に達し、高齢者人口はピークに達する見込みで、これは3人に1人が65歳以上となることを意味します。
2060年になると、高齢者人口こそ減少に転じますが、同時に高齢化の進展にともない総人口の減少が進み高齢者割合は約40%に達し、ほぼ半数が65歳以上となる可能性も示されています。
出典総務省「統計からみた我が国の高齢者」
75歳以上の3人に1人は要介護認定者?
65歳以上人口の増加に伴い要介護認定者数も増加することが予想されています。
2023年時点で要介護認定者数は約690万人おり、65歳以上人口の約20%が要介護または要支援状態にあります。特に75歳以上の高齢者では、要介護認定者の割合が急増し、75歳以上の人のうち約30%が要介護認定者になっています。
団塊の世代が75歳以上に達する2025年には、要介護認定者数はさらに増加し750万人、2040年のピーク時には約850万人が要介護認定者になると予想されています。
出典厚生労働省「令和4年度介護保険事業報告(年報)」
高齢者が迎える最期は自宅?それとも専門施設?
日本では約85~90%の人が病院や高齢者施設で最期を迎えるといわれており、自宅で最期を迎える人は極めて少数と言われています。
このうち、介護施設で最期を迎える人の割合は、約10~20%程度と言われていますが、「特別養護老人ホーム」や「介護付き有料老人ホーム」など24時間介護体制が整っている施設に入居した場合では、長期入居者がそのまま施設で亡くなるケースも多くなっています。
単身者、いわゆる「おひとり様」の場合は頼れる親族が身近にいないことも多く、終の棲家としての高齢者施設の選定はより大きな課題になることが予想されます。
人生のエンディングに向けた
事前準備・相続対策は専門家に相談を
高齢者施設への入居を考えるタイミングは、自身のエンディングと向き合うタイミングと重なるケースがほとんどだと思います。
家族のいる方は家族と向き合い、家族がいないいわゆる「おひとり様」は適切な相談相手を決めるなどして、エンディングに向けた準備を進めていくことになります。人生のエンディングを円満に迎えるためには事前準備と相談相手が不可欠です。
廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、高齢者施設に入居している方やそのご家族に向け、公正証書遺言の作成など人生のエンディングに向けた事前準備や相続対策、相続税の申告に至るまで様々なサービスをご提供しています。
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