ふるさと納税は今後どうなる?
2023年10月の規制強化で変わるルール

実質2,000円の拠出で返礼品が貰える納税制度として人気の高い「ふるさと納税」。

総務省のデータでも控除額は6,797億円、控除の適用を受けた人の総数は891万人と前年比約1.2倍に上るなど、制度発足来最高水準にあります。全国には都道府県と市町村で合計1765の自治体がありますが、寄付するならどの自治体が人気なのか気になるところです。

その一方で、ふるさと納税が2023年10月から改悪されたともっぱらの評判です。

この記事ではこれからふるさと納税を考える人に向けて、ふるさと納税を取り巻く環境について最近のトピック等を交えて分りやすく解説していきます。

データで見るふるさと納税
笑った自治体・泣いた自治体はどこ?

ふるさと納税で笑った自治体はどこ?令和4年度受入額100億円以上の市町村

ふるさと納税受入額100億円以上の団体 令和4年度

団体名 受入額(百万円) 受入件数(件)
1 宮崎県 都城市 19,593 1,004,337
2 北海道 紋別市 19,433 1,289,418
3 北海道 根室市 17,613 829,461
4 北海道 白糠町 14,834 926,034
5 大阪府 泉佐野市 13,772 923,581
6 佐賀県 上峰町 10,874 898,015

受入額(流入した額)が1000億円を越えた自治体は全部で7自治体ありました。こうした自治体は多くの寄付を受けることで、地域課題の解決や地域の活性化に資金を振り向けることができます。

ランクインした顔ぶれを眺めてみると、海産物等の地場食材に強みを持つ北海道・九州が大きな勢力を占める一方、大都市圏である大阪府にある泉佐野市がランクインしているのが目を引きます。

泉佐野市といえば、過去に返礼品にアマゾンギフト券を上乗せするキャンペーンを実施したところ、総務省が2019年6月に始めた新制度では泉佐野市を除外する判断を受け最高裁まで争った結果、2020年6月に国側敗訴が確定、その処分が取り消された経緯があるなど、ふるさと納税においては暴れん坊の印象がある自治体としてよく知られています。(泉佐野市は、現在も総務大臣から「ふるさと納税」の対象となる地方団体として指定されています。)

ふるさと納税で泣いた自治体はどこ?令和4年度流出額1000億円以上の市町村

ふるさと納税流出額(控除額)100億円以上の団体 令和4年度

団体名 市町村民税控除額(百万円) 控除適用者数(人)
1 神奈川県 横浜市 27,242 398,606
2 愛知県 名古屋市 15,926 231,165
3 大阪府 大阪市 14,853 250,358
4 神奈川県 川崎市 12,115 187,502

逆にふるさと納税で控除額、すなわち流出額が100億円を越えた自治体は4つありました。受入額のランキングとは逆に、都市部の自治体が多いことがわかります。

こうした自治体の立場からすれば、本来住民税として自分の自治体の住民サービスに活かされるべき住民税が、ふるさと納税という形で流出してしまうわけですから、そのことに対する不満の声も少なくありません。

中でも、横浜市は流出額・適用された人の数ともに突出しており、横浜市の人口は約376万人のうち、約10人に1人がふるさと納税を行っている計算になります。

ふるさと納税の次の受け入れ額を分析。100億円超え候補の自治体はここ!

令和4年度のランキングからも分かるように、大都市圏では税収の外部流出というデメリットをダイレクトに受け、危機感が顕在化しつつあり、首長の中には不満の声をあらわにする人も出始めています。

こうした中、大都市圏の一つである京都市がふるさと納税に本腰を入れ始めたことが話題になっています。

京都市の令和4年度ふるさと納税受入額の全国順位は総務省の調査によれば7位、100億円の受入額にわずかに届かない95億円でした。令和元年度の寄付受入額が2億5,500万円で、40億円近い流出だったことを考えると大きな伸びといえます。

京都市が持つ歴史を活かした観光資源への誘因をメインにした返戻品を主軸に据えるなど、「コト消費」にフォーカスをした返礼品の品ぞろえも特徴的です。

もしこのまま京都市のふるさと納税にさらに本腰を入れたとしたら、京都というブランド力からみてさらなる上位進出もあり得るのではないでしょうか。

2023年10月
ふるさと納税に新たに加わった2つの規制

ふるさと納税の歴史と過去にもあったふるさと納税の規制強化

2008年に始まったふるさと納税ですが、2015年「ワンストップ特例制度」の導入により税務署での申請手続きが省略できるようになったことを受け、利用者が一気に増えました。

一方で、各自治体による返礼品競争が激化し、寄付金獲得のために「還元率の高さ」や「換金目的」を重視する自治体が増えました。中には還元率の高いAmazonのギフトカードのような返礼品を謳う自治体も現れ、弊害が目立ち始めたことを受け、総務省は2019年に返礼品の規制を強化しました。

2019年の主な変更点

返礼品・返礼割合の制限 返礼品は地場産の品物に限り、価格は寄付金額の3割程度にする
返礼品の価格表示禁止 返礼品の価格やその割合の表示を行わない
資産性の高い返礼品の禁止 商品券・電子マネーなど金銭に変わるものや資産性の高い品物(貴金属・宝飾品・電子機器)は返礼品にしない

それでは2023年10月から新たに導入された改正(改悪?)内容とはどのようなものなのでしょうか。

規制強化・その1募集適正基準の改正で2023年10月から隠れ経費も5割ルールに算入

ふるさと納税では、これまでも各自治体の返礼品の調達費用の割合は寄附額の3割以下、経費の総額は寄附額の5割以下にするという、いわゆる「5割ルール」が定められていました。

実際、総務省がまとめた「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度調査)」でも寄付金に対する返礼品の調達費用は3割以下、経費を含めた総額も46.4%と基準内に収まっていることが分ります。

しかし、ここで挙げられている経費の中には、ふるさと納税ポータルサイトの利用手数料や寄附金受領書の発行費用、ワンストップ特例制度の事務費用などが含まれていませんでした。

こうした「隠れ経費」が今回の規制強化に際して経費総額に算入されることとなりました。

今後、各自治体では募集にかかる費用を圧縮するか、寄附金額を引き上げるか、寄附金額をそのままにするなら返礼品の質・量を落とすかを迫られることになりそうです。

結果として、返礼品のボリュームが少なくなったり、返礼品に必要な寄附金額が増えたりする可能性があることは寄付する側からは大きな問題になることが予想されます。

規制強化・その2地場産品基準の改正で生まれた新たなルール

ふるさと納税の人気の返礼品といえば、お肉やお米といった食べ物です。実際に寄付金の受け入れ金額ランキングを見ても分るように、上位の自治体は海産物や畜産物の収穫・生産に強い自治体が占めています。

しかし、自治体の中には、別の都道府県や海外から仕入れた肉をしばらく地元で熟成させたり、他の産地のお米を地元で精米したものを「返礼品」としている自治体があることが問題視されていました。

2023年10月からは熟成肉と精米については、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限るとしたほか、仮に都道府県外産とセットにする場合でも、地場産品の価値が全体の七割以上であることに改められました。

中でも、今回特に影響が大きいのが、お肉、なかでも熟成肉と言われるもので、これまでのように、他の都道府県や海外から輸入した肉を地元でただ熟成させただけでは返礼品とできなくなりました。

因みに、令和4年度の受け入れ額100億円超えランキングで大都市圏から唯一ランクインした泉佐野市ですが、受入れ総額137億円のうち32億円がこの熟成肉だったといわれています。

ふるさと納税の申告はどうやってすればいい?

「ふるさと納税」を行うと、寄付先の自治体からは「寄付金受領証明書」が送られてきます。この書類は確定申告を行う場合もワンストップ特例制度を利用する場合でも必要ですので、大切に保管しましょう。

確定申告を行う必要がなく、ふるさと納税の寄付先が5団体以内であればワンストップ特例制度を利用するのが良いでしょう。

ただし、確定申告とワンストップ特例制度を併用することはできません。年末調整で完結しない控除等がある場合や寄付団体が5団体を超えるような場合は、確定申告で申告するようにしましょう。

廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、個人の確定申告に関する様々なご相談に加え、申告のサポートをお受けしています。また、各分野に精通した専門家とも連携し、税金に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスから記帳・申告まで一括サポート可能です。

ふるさと納税以外にも株式の譲渡や不動産の譲渡があった場合など確定申告を行うことでメリットが得られる場合があります。税金に関する疑問やお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。当事務所の対応エリアは以下の通りです。

廣瀬総合経営会計事務所・相続相談の対応エリア

  • 杉並区
  • 中野区
  • 三鷹市
  • 武蔵野市

初回利用者向けの無料相談会も開催しておりますので、まずは一度お気軽にお問い合わせくださいませ。