将来を見据え”種まき”をしよう

コロナ禍は、人々の行動パターンや消費行動、認識を人きく変えました。その変化は、新型コロナが収束しても以前のまま冗へ戻ることはないでしょう。ヒト・モノ・カネを使って、業績を上げながら将来への準備(種まき)を進めなければなりません。

※本稿は、藤屋伸二氏(藤屋ニッチ戦略研究所(株)代表)の執筆によるものです。

現在と将来なりたい会社像をつなぐ架け橋が「戦略」

企業は、経営環痰の変化に適合していかなければなりません。しかし、どのような経営環境になるのかが、はっきりとわかりません。
将来が明確でないのであれば、自社が望む新しい状況を創り出すことが可能になります。その状況を創り出すのが「戦略」です。

戦略とは、「現在」と「将米なりたい会社像」をつなぐ架け橋となるものです。

戦略には、「他社がマネのできないもの」や「他社がマネをしたくないもの」が必要です。
そのような自社の「強み」が、利益を生み出すことになります。

「そんなものは、自分の会社にはない」と思うかもしれませんが、心配は無用です。他社にはない「強み」があるから、お客様は自社の商品・サービスを選んでくれるのです。

他社がマネのできない「強み」を前面に打ち出して、売上を拡大

屋根の雨漏り補修専門の株式会社齊藤板金(札幌市)は、「15 年保証」を打ち出し、業組を伸ばしています。
齊藤板金には、平成14年の創業以来20数年の間、同社が補修した箇所から雨漏りの再発が一度もないという実績がありました。
しかし、職人気質の同社にとって、雨漏りを再発させないことは当然のことであり、それがセールスポイントになるとは思ってもみませんでした。
ところが、お客様の声から「雨漏りが再発しない」ことが、実は、他社がマネをしたくてもマネのできない「強み」だと気づかされたのです。そこで、補修後の「15年保証」を前面に打ち出しました。
その結果、それまで10 %程度だった元請け比率が、3年足らずで70%を超え、令和3年に入ってからは、元請け比率が100%となる月もありました。元請け比率が増えたことで、粗利益率も大幅に改善しました。
また、他社にない特徴を打ち出したことで、値上げしたにもかかわらず売上も伸びました。

「やるべきことシート」で将来への種まきを考えよう!

「将来なりたい会社像」をめざすには、限りある経営資源であるヒト・モノ・カネ・時間を有効に使って、業績を上げながら、同時に将来を見据えた”種まき”を進めていかなければなりません。
そこで、「現在やっていることをそのまま続ける」「現在はやっていないが、新たに始める」「やらない(取り除く、大幅に減らす)」といった視点から、商圏、対象事業、対象顧客、商品やサービスの機能、品質、価格、納期、販売ルート、販売方法、設備、施設、情報発信などを点検してみましょう。
「取り除く、大幅に減らす」という答えが出たものについては、それにより、どの程度、経営資源を削減できるかを検討しましょう。
余剰となった経営資源は、「新たに始める」「大幅に増やす」など、将来なりたい会社像に必要なことへ振り分けます。
限りある経営資源で、現在の業績を上げるとともに、将来なりたい会社像に向けての準備ができるようになります。それには、「やるべきことシート」を作成してみましょう。
図表2は、齊藤板金の「やるべきことシート」に一部修正を加えたものです。齊藤板金は、「下請けからの脱却」を目標として掲げ、「元請けにつながるかどうか」を判断基準として意思決定をしています。
「やるべきことシート」は、何かに迷ったときの判断基準にもなります。
例えば、A案は「現在の業績は上がるが、将来には結びつかない」、反対にB案は「A案ほど利益は出ないが、将来の準備につながる」というときに、B案を採用するという判断ができるようになります。