株主還元の配当金の仕組みと税金の関係を
税理士事務所が解説

2024年初頭から勢いを増した日本の株価ですが、その代表的な225社で構成される日経225が7月11日に初めて42,000円を超え、史上最高値を記録しました。

中国の景気低迷による海外投資家の日本株再評価や、歴史的な円安による利益押上げなども大きな要因であることには間違いありませんが、企業自身が利益や内部留保の使い道として株主還元策を多く実施するようになってきたことも大きな要因とされています。

今回の記事では企業が実施する代表的な株主還元策である配当と株価の関係性、そして税金との関係について税理士事務所が分かりやすく解説していきます。

代表的な3つの株主還元策と配当金のトレンド

株主から見た最大の株主還元は株価の上昇であることには間違いありません。しかし、ここ数年で企業自体の業績拡大や東京証券取引所の資本効率の改善要請、アクティビストの増加などがあり、様々な株主還元策が活発に行われるようになっています。

現在活発に行われている株主還元策のうち代表的なものは以下の3つです。

代表的な株主還元策

配当 企業が事業活動によって得た利益を株主に現金として支払うこと。利益が増えると増額される傾向がある。
自社株買 企業が発行済みの株式を市場から買い戻すこと。流通している株式が減少するため、1株あたりの価値が上昇する。
株式分割 資本金を変えずに1株を分割すること。1株あたりの株価が下がり、株式の流動性が高まる。

中でも、配当については株主への利益還元の方針を変更する企業の増加傾向もあり、2024年4~5月に「配当方針(または配当政策)」や「株主還元」を含む開示を行った上場企業数は123社と、2022年(88社)、2023年(57社)を大幅に上回っています。

株主還元策の代表格である配当金についても、期末に向けて配当金額の上方修正を行う企業が増えることが予想されています。

配当金の仕組みと種類・株価との関係性について

増配と減配 企業の稼ぐ力が表す配当政策

企業が株主への配当を増やすことを「増配(ぞうはい)」、逆に減らすことを「減配(げんぱい)」といいます。

「増配(ぞうはい)」する企業は現在、そして将来に向けて収益が拡大することに確信があり、その果実を配当として株主に還元することで報いようとします。

逆に配当金を減らす「減配(げんぱい」を行う企業は将来の収益が先細りすることを見通していることがほとんどです。収益が細っていく企業の株式は不人気となり、多くの場合、減配=株価の下落となっていきます。

配当金はどこから生まれる? 配当金がゼロになることもある?

配当金は株主への「利益の配分」として行われ、会社の利益(利益剰余金を原資)が配当の源泉とするのが一般的です。従業員の賃金や取引先への支払い、社債や銀行からの借入れに対する返済、税金の支払いを終えたのち、残ったお金を(普通)配当として株主に還元するのが最も一般的なスタイルです。

一方、配当の支払いの有無や金額などはあらかじめ定められておらず、企業の方針や業績次第では配当が行われない、すなわちゼロ配当となる場合もあります。また、配当に関することは原則として株主総会で決定し、株主総会の決議に基づき、各株主の持ち分に応じて配当が行われます。

配当にはいくつかの種類がある

一口に配当といっても、中には会社としての祝い事を株主と一緒に祝うことを目的とした配当や、一時的な利益を株主に対して還元するための配当も存在します。

配当金の種類

普通配当 企業が生み出した利益を源泉として決算期ごとに株主へ支払われる配当
記念配当 企業の創立記念や上場記念などの祝いごとがあった場合に株主へと支払われる配当
特別配当 一時的な企業利益の増加による配当

配当金の良し悪しを見極めるための指標と投資の手段

儲けからどれだけ配当を支払っているかをみる「配当性向」

次に配当金の良し悪しを量るための指標についてみていきましょう。

「配当性向」は会社が税引後の利益である当期純利益のうち、どれだけを配当金の支払いに向けたかを示す指標です。この数値が高い企業ほど多くの配当を株主に還元しようとする姿勢が強い企業と言えます。配当性向は以下の算式で求められます。

配当性向(%)=配当金総額÷当期純利益×100

例えば、当期純利益が6,000万円だったとして、その時期の配当金が合計で1,800万円支払われた場合の配当性向値は30%になります。足元で日本企業の配当性向は30%~40%程度と言われています。

外国に比べ、配当性向が低いことが長らく指摘されてきましたが、ここ数年で増配を宣言する企業が増え、配当性向も上昇傾向にあります。

配当金を利回り換算する「配当利回り」

次に配当利回りをみていきましょう。この配当利回りの数値が高い企業ほど投資した金額に対して多くの配当を得られる企業と言えます。配当利回りは以下の算式で計算できます。

配当利回り=1株当たり配当金÷株価×100

仮にA社の株価が1株1,000円で、配当金が50円だった場合、配当利回りは5%ということになります。この算式では配当金が増えれば配当利回りが増える一方で、株価が下落した場合にも配当利回りが上がることが分かります。

また、将来に向かってこの配当利回りが一定であれば、株価が上昇するにつれ、配当金の実額は増えていきます。そのため、高配当株は長期保有することで大きなメリットを享受できる特徴があるといえます。

一方で配当利回りを見る時には注意も必要です。5%を超えるような配当利回りの企業の中には、株価が低迷したことで見た目の年間配当利回りが高く見えてしまっている企業もあるからです。

こうした企業の場合、将来の利益の先細りが見通されていることが多く、目に見える配当利回りだけを追って投資すると将来減配に見舞われ、思ったような配当を得られなくなる可能性があります。

高配当株式をまとめた投資信託もある

ETF(上場株式投信)や投資信託でも様々な高配当株をまとめたファンドが販売されています。

少ない金額でも多くの企業に投資できることはもちろん、仮に1社2社減配があったとしても銘柄の入れ替えなどでカバーする仕組みが設けられているなど、期待する配当利回りを確保しやすい組成になっています。

また、会社四季報やマネー雑誌やネットでは安定して配当を毎年増やし続けている「連続増配企業」も紹介されています。個別株購入の場合は参考にしてみるのもよいでしょう。

意外に難しい配当金と税金の関係
迷ったときは専門家に相談しましょう

言うまでもありませんが、受け取った配当金は配当所得になり所得税の対象となります。個人の配当金に対する税率は、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)となります。

ただ、多くの方が利用している特定口座で配当金を受け入れる場合、源泉徴収で納税を完了させ確定申告なしで、納税を完結することができます。また、2024年1月から始まった新NISA(少額投資非課税制度)の場合、値上がり益はもちろん、配当金についても非課税です。

関連サイト金融庁「NISAを知る

一方で、複数証券会社で証券口座を保有しており、口座間の通算を行う必要がある場合や、配当控除を受け他の所得と合算する場合には、確定申告が必要です。スムーズな申告・納税を行うためには税理士をはじめとする専門家に相談するのもお勧めです。

廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、株式をはじめとする資産税に関する様々なご相談に加え、相続に関する相談をお受けしています。また、各分野に精通した専門家とも連携し、税金に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスから記帳・申告まで一括サポート可能です。

JR西荻窪駅から徒歩1分の立地ですので、アクセスも良好です。株式の譲渡や不動産の譲渡など資産関連の税金に関する疑問やお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。当事務所の対応エリアは以下の通りです。

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