知っておきたい株式用語と自社株買いの関係を解説

日本の代表的な株式指数である日経225平均株価は7月11日に初めて42000円を超え、史上最高値を記録しました。一方で、株価は8月に入り史上最大の下げ幅を記録するなど荒い展開が続いています。

このように様々な角度から注目を浴びている株式投資ですが、何を基準に売買を行えばよいか迷っている投資初心者の方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では株式投資を行う際に知っておきたい用語と、代表的な株主還元策である自社株買いとの関係、そして税金との関係について税理士事務所が分かりやすく解説していきます。

株式投資を始める時に
押さえておきたい3つの指標

株式投資を始める際に何を参考にして投資すればよいか、迷う方も多いと思います。

株価のアップ・ダウンをグラフ化した「株価チャート」を参考にするのも一手ですが、個別銘柄を選定する際の基本的な分析方法として知っておきたい4つの用語をご紹介します。

これらの指標は多くの企業が公表しているデータですので簡単に入手することができます。

ROE(自己資本利益率)
  • 自己資本と当期純利益の関係から収益性を測る指標
  • 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100で算出
EPS(一株当たり純利益)
  • 1株当たりの利益がどれだけあるのかを示すもの
  • 当期純利益÷発行済株式数の計算式で算出
PER(株価収益率)
  • 当期純利益と株価の関係から株価の割安度を示した指標
  • 株価÷1株あたり当期純利益で算出

その1ROE「自己資本利益率」

ROE(自己資本利益率)の計算方法と株価との関係

自己資本をどれだけ有効に使って稼いでいるかを表す指標がROE(Return On Equity)です。日本語では「自己資本利益率」と表され、以下の算式で求められます。

ROE(自己資本利益率)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

ROEが高いということは少ない元手(自己資本)をうまく使って、効率良く稼いでいる会社という評価になることが一般的です。一般にROEが10%を超える企業は稼ぐ力が強いと評価されます。足元での日本企業のROEは9.50%まできており、優良とされる10%まであとわずかのところまできています。

ROEを高めるために企業が行う施策 「増配」と「自社株買い」

算式を見ると、純利益が増えるとROEは上昇し、純利益が減るとROEが低下します。一方で、ROEは自己資本の額が減ると上昇し、自己資本の額が増えることも分かります。

自己資本の比率を下げ、ROEを向上させるために用いられる施策が「増配」です。配当は、原則的に自己資本のひとつである「利益剰余金」から支払われますから、配当を増やす「増配」を行えば自己資本が減少し、ROE向上に繋がります。

また、ROEは「自社株買い」によっても向上します。企業が市場に流通している自社株を買うと、その金額は純資産の部にある「株主資本」の「自己株式」にマイナス額として計上され、自己資本を減少させる効果があるからです。

日本でもROE重視の経営を行う企業が増えつつあり、増配や自社株買いといった株主還元策がさらに増えることが期待できそうです。

その2EPS「一株当たり純利益」

EPSは「Earnings Per Share」の略で、1株当たりの利益がどれだけあるのかを示すもので、企業が1事業年度(通常は1年間)に上げた収益から、税金費用を含むすべての費用を差し引いた利益を発行済み株式数で割ったものです。

EPS(一株当たり純利益)=当期純利益÷発行済株式数

この算式から、EPSの値は企業の当期純利益が増えると上がり、減ると下がることが分かります。そのため、基本的に数値が高いほど企業の収益力は高いといえます。

また、当期EPSと来期以降の予想EPSを比較することでその企業の成長性を図ることができ、その伸び率が市場予想を上回った場合、株価の上昇につながりやすいとされています。

一方、EPSは発行済株式数の増減によっても変動することも算式から分かります。発行済み株式数を減らす方法のひとつとして用いられるのが自社株買いです。

前述の通り、企業が市場に流通している自社株を買うと、その金額は純資産の部にある「株主資本」の「自己株式」にマイナス額として計上され、計算基礎の分子となる発行済み株式数が減少することが分かります。結果としてEPSが上昇し、市場での評価も高まることで株価上昇につながることとされています。

その3PER「株価収益率」

PERとは、「Price Earnings Ratio」の略で、「株価収益率」と表されます。株価がEPS(1株当たり純利益)の何倍の価値になっているかを示すもので、以下の算式で求められます。

PER(株価収益率)=株価÷EPS(一株当たり純利益)

一般的にPERの数字が大きいほどその株は割高、小さいほど割安と判断されます。別の見方をすると、現在の株価が何年分の利益に相当しているかを表した指標とも言え、高ければ高いほど将来の成長性が高い企業と評価されていることが分かります。

一方、PERは業種により高い業種と低い業種があり、何倍なら割高、何倍なら割安という絶対的な基準で判断するのは危険です。

また、高PER企業の株価は将来の成長が株価に織り込まれている言える半面、買われ過ぎになっている可能性もあります。企業が発表する予想PERについても、期中に業績の修正が行われた時など数値が変化するため、注意が必要です。

自社株買いが各指標に与えるインパクトと株価

自社株買いはなぜ行われるのか

自社株とは企業の自己資金で自社株を買い戻すことです。自社株買いは2001年の商法改正前までは原則禁止されていましたが、いまでは特定の目的や用途がなくとも実施が可能になりました。

企業が自社株買いを行う主な理由は以下の通りです。

自社株買いを行う主な目的

1.敵対的買収の防止 株価上昇を通じた経営権を取得のために必要な資金を増加させることで、敵対的買収を困難にさせる
2.市場・投資家へのアナウンス 自社株買いによって改善した各指標を市場にPRすることで新たな株主を獲得する
3.株主への還元 業績・財務に関する指標の改善による株価の上昇を通じた既存株主に対する還元

これら以外にも自社株買いには株価の下支えや新株発行時の希薄化の防止などもありますが、ここ数年注目を集めているのが、企業が株主に対して利益を還元する方法として行う自社株買いです。

自社株買い(自己株式の取得)をすると株価が上昇しやすくなる理由

自社株買いによって市場から株式が買い戻されると、発行済み株式数が減少します。そのため、ROE(自己資本利益率)、EPS(一株当たり純利益)、PER(株価収益率)といった指標が改善するため株主価値の向上が期待できます。

EPS以外にも経営効率や株価の割安・割高をあらわす指標であるROE(自己資本利益率)やPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)にもインパクトがあるため、株価上昇の要因になりやすいといえます。

自社株買いと主な株式指標との関係性をまとめると以下のようになります。

自社株買いと各指標の関係

ROE(自己資本利益率) EPS(株価収益率) PER(株価収益率)
自社株買いを行うと一般に上昇する。 収益性が高まったとみられ、株価上昇につながりやすい 自社株買いを行うと一般に低下する。
自社株買いを行うと一般に上昇する。 収益拡大の期待が高まり、株価上昇につながりやすい 株価が割安とみられ、株価上昇につながりやすい

一方、余剰資本があるにもかかわらず成長投資の機会が限られている場合などにも自社株買いが株主への還元策として選ばれることもあります。自社株買い=企業の成長~株価上昇 とは言い切れませんので注意が必要です。

企業が自社株買いを行う方法と
取得した自社株の使い道

上場企業が自社株買いに際して用いる「TOB」

上場企業は株式市場を通じて自社株買いを行うことが可能です。この場合、自己株TOB(Take Over Bid 公開買付)を用いることが一般的です。

自己株TOBは、株式の買取価格や買付期間、目的、取得予定の株数などを公示した上で、不特定多数の投資家から株式を買い集める方法です。

TOBをおこなう場合、企業は売り手である株主に対しそのあらかじめTOB価格を提示します。TOB価格は時価よりも高く設定されることも多く、TOBが発表されると設定されたTOB価格に向け株価が上昇することが一般的です。

企業が取得した自社株はどうなるのか

自社株買いで取得した株式は、「資産として保有」「売却して処分」「消却」のいずれかの形で取り扱われることが一般的です。このうち、「売却して処分」するシナリオは売却した株式が市場に戻ることで発行済株式総数が増え、1株当たりの利益が減少するため、株価にはマイナスの影響が出てしまいますから、あまり現実的な取り扱いとは言えません。

購入株を消却せずに「資産として保有」すれば、企業が保有する自己株式は純資産の勘定科目のいわゆる「マイナス勘定」として自己資本(株主資本)を減少させる効果があり、ROE(自己資本利益率)、EPS(一株当たり純利益)、PER(株価収益率)といった指標が改善することが期待できます。

また、企業が保有する自己株式には議決権や配当の権利が付与されません。同様に、保有する自己株式を「消却」すれば、流通している自己株式を減少させ、 自社や既存株主の持株比率を高めることができ、敵対的買収の未然防止といった効果も期待できます。

最近では企業が保有する自己株式を株式交換によるM&A資金としたり、ストックオプションとして役職員に付与するといった取扱方法も増えてきています。

株取引と税金の関係性について
迷ったときは専門家に相談しましょう

株式投資で利益が出た場合は、原則として確定申告が必要です。ただし、保有する証券口座がNISA口座であればそもそも非課税ですし、特定口座で「源泉徴収あり」を選択した場合は証券会社が所得税・住民税を源泉徴収するため確定申告は不要です。一方、株式投資で損失が出た場合は原則として確定申告の必要はありません。

しかし、上場株式等の譲渡損失が発生した場合は、その年の他の上場株式等の譲渡益や配当所得と相殺することができ、節税効果が得られます(損益通算)。また、その年で相殺しきれなかった損失額については、翌年以降3年間繰り越すことが可能です(繰越控除)。

こうした「損益通算」「繰越控除」を行い、税メリットを得るためには確定申告を行わなければなりませんが、一般的な確定申告に比べるとやや難易度が高いといえます。

利益を得たときのみならず、損失を被った時にもしっかりと税メリットを得るためには、税理士に確定申告を相談するのもよいでしょう。

廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、株式の譲渡にともなう税務申告はもちろん資産税に関する様々なご相談をお受けしています。また、各分野に精通した専門家とも連携し、税金に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスから記帳・申告まで一括サポート可能です。

事務所はJR西荻窪駅から徒歩1分の場所にあり、アクセスも良好です。株式の譲渡にともなう税金に関する疑問やお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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