あなたは何歳まで働く?
65歳で大きく変わる家計と税金
多くの会社で定年が65歳まで延長されており、中には定年制を廃止する企業もあるようですが、多くの人は65歳を一つの区切りとして会社員生活を終えるのではないでしょうか。
この区切りになる65歳が現実に訪れたときにこれまでの生活はどう変化するのでしょうか?この記事では65歳でリタイアした後に訪れる家計や税金について税理士事務所がわかりやすく解説していきます。
内閣府
「生活設計と年金に関する世論調査」から見える
老後とお金
あなたは何歳まで働く?
「生活設計と年金に関する世論調査」は生活設計と年金に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とするために、内閣府が2023年(令和5年)11月に調査した結果をまとめたものです。
この調査によると、「何歳まで仕事をしたいか、またはしたか」の問いに対し、約4割の方が66歳以上と回答しています。
また、「厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方」についても、44 4%の方が「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」と回答しており、公的年金開始後も働こうとする人の割合が半数近くいることが分かります。
退職後の生活資金はどうやって確保する?
老後の生活設計の中での公的年金の位置づけは、26.3%の方が「全面的に公的年金に頼る」、53.8%の方が「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と回答しており、公的年金が老後生活資金の中心とする人の割合が全体の約80%に上ることが分かります。
これらの調査結果からみても、65歳まで働くことはもはや当然のことになったと言ってよいでしょう。また、65歳からは公的年金と過去のストックからの取り崩しが家計の柱になることが分かります。
65歳以上無職世帯のお金のリアル
基本構造は貯蓄の取り崩し
65歳以降の無職世帯の実収入はいくら?/厚生労働省 2023年家計調査報告
前段の「生活設計と年金に関する世論調査」からも分かるように、65歳以上の世帯においては公的年金の受給とこれまでの貯蓄からの取崩しが生活資金確保のメインシナリオになっていきます。
厚生労働省が公表した「厚生労働省 2023年家計調査報告」ではよりリアルな家計の状況を把握することができます。
このグラフは同調査報告から引用した65歳以上無職2人世帯の家計収支データです。上段が収入、下段が支出になっており、実収入が244,580円なのに対して、消費支出が250,959円と赤字になっていることが分かります。
これに、非消費支出(社会保険料・税金等)を加えるとその赤字幅はより拡大し、月平均約38,000円の赤字が累積していくことになります。
高年収だった人でも意外に少ない厚生年金
会社員だった人の多くは在職中に厚生年金の被保険者だった人だと思います。65歳から受給が始まる厚生老齢年金の受給額は支払ってきた保険料に応じて決まるため、基本的には現役時代の年収が多い人ほど、また加入期間が長いほど多くの年金を受け取れます。
そのため、年収ベースで数千万円の報酬を受け取っていた人はさぞかし厚生年金の額も多いはず、と思いがちです。しかし実際には、数千万円クラスの年収を得ていた会社員であっても受給できる老齢厚生年金の最高額は月額約30万3,000円で止まってしまいます。
これは受給額の算定基準である計算の基礎となる標準報酬月額と標準賞与額に上限が定められているためです。月例給与に係る標準報酬月額では上限が32等級・63万5000円に、賞与についても一回あたり150万円が上限として設定されていためです。
そのため、高年収の会社員であった人でも青天井で老齢厚生年金を受け取れるというわけではありません。年収に関わらず40年間すべての月において保険料の全額を納めていれば同じ金額の年金になる国民年金との大きな違いといえます。
公的年金から天引きされる金額は意外に大きい
前段の表中に「非消費支出」として記載されていたものは主に社会保険(健康保険料・介護保険料)と税金(所得税・住民税)です。
いずれも受給する公的年金から天引きされるものであることを押さえておきましょう。これらの天引きの明細は年金振込通知書で確認することができます。
年金振込通知書サンプル
(引用元:日本年金機構HP)
このうち注意が必要なのが健康保険料・介護保険料と住民税です。年金振込通知書の中の(2)~(5)でその金額が確認できます。
まず健康保険料・介護保険料です。多くの定年退職後に多くの人が加入する国民健康保険・介護保険はその人の所得に保険料がよって決まります。
退職直前まで一定以上の報酬を得ていた場合、その所得がそのまま国民健康保険料の計算基礎になってしまい、退職直後の国民健康保険料の高さに驚くことが多いようです。
一方、社会保険には退職後も最大2年間加入し続けられる「任意継続」という制度もあります。
在職時とほぼ変わらない福利厚生制度が活用できることや、扶養家族を引き続き被扶養者にできるなどのメリットもある一方で、これまで会社と折半していた保険料が全額自己負担になるなど、収入次第では国民健康保険よりも保険料が高くなることもあります。
仮に東京都杉並区で年間200万円の公的年金を受け取る人の場合、国民健康保険料が約20.6万円、介護保険料が4.5万円、合計年間25.1万円が年金から天引きされることになります。
次に住民税をみてみきましょう。住民税は1月から12月までの所得を基に計算され、翌年の6月から納付を始める仕組みです。所得税がその年の所得について決まるのに対し、住民税は前年の所得が計算の基礎になります。
つまり、定年退職直後は現役時代の収入を基に住民税が計算されるため、退職直後の1年間は住民税の額が現役時代並みに高止まりすることを念頭に置くことが大事です。
実際に公的年金から天引きされる社会保険・税金は合計すると年金額の約15%程度といわれています。定年後の生活設計を考える上では受け取れる年金は額面金額の85%程度として考え、その上で資産からの取崩し額を計算していく必要がありそうです。
年金が始まったら確定申告は必要?
しないとどうなる?
公的年金受給開始後に確定申告が必要な人
会社員だった間は年末調整によって確定申告が不要だった人も、退職後は、確定申告が必要かどうかを自身で判断しなければなりません。
年金受給者で確定申告が必要かどうかは、課税対象となる公的年金(老齢年金)の受給額と公的年金以外の所得金額で決まります。具体的には、以下の2つのいずれかに該当する場合は原則として確定申告が必要です。
- 公的年金以外の所得が年間20万円を超える人
- 公的年金等を年間400万円以上受け取る人
厚生年金・国民年金に加え、企業年金等を上乗せで受け取る人は該当する可能性があります。
公的年金受給開始後に確定申告をしなくてもよい人
公的年金を受給する人には、「確定申告不要制度」が設けられており、その要件は、以下の通りです。
- 源泉徴収の対象となる公的老齢年金の収入金額が400万円以下の人
- 公的年金以外の所得金額20万円以下の人
公的年金で年間400万円の受取りは月当り33万円というかなり高レベルの年金額です。そのため、65歳以上で主な収入が公的年金のみの場合は確定申告をする必要がないケースが多そうです。
公的年金開始後でもあえて確定申告するメリット
本来「確定申告不要制度」の対象であれば確定申告を行う必要はありません。しかし、中にはあえて確定申告を行うことで還付金等のメリットが得られるケースもあります。その代表例が控除の対象となる支出があった場合です。
65歳以降も発生する可能性が高い所得控除
- 民間保険の保険料を払った(生命保険料控除 地震保険料控除)
- iDeCoなどの掛金を支払った(社会保険料控除 小規模企業共済等掛金控除)
- 病院・薬等の支出(医療費控除 セルフメディケーション税制による医療費控除)
- 寄付等を行った(寄付金控除 ふるさと納税 政党等寄附金特別控除)
- その他(雑損控除 住宅ローン控除)
こうした控除対象となる支出がある場合は、あえて確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。特に65歳以降は医療費の支出が多くなってきます。世帯全体の医療費のレシートはきっちり保管しておきたいですね。
65歳で大きく変わる家計と税金
確定申告で迷ったときは専門家に相談しましょう
とはいえ、会社員時代は無縁だった確定申告をひとりでやるというのは結構骨が折れるものです。また、間違えてしまったときにはペナルティを受ける可能性もあります。
さらに、確定申告時期(2月~3月)の税務署は混雑するため、感染症のリスクも高くなります。もちろん、自宅からオンラインで申告する方法e-Taxもありますが、機材を整える必要があるうえに一定のITリテラシーも必要です。
確定申告するべきかどうか、どんな方法で申告を行うのか。迷ったときには税金の専門家である税理士に相談してみるのもよいでしょう。
廣瀬総合経営会計事務所は杉並区で35年にわたり多くのお客様の確定申告のサポートを行ってまいりました。経験豊かな税理士、行政書士、FPに加え、他士業との連携により定年後に起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスから記帳・申告まで一括サポート可能です。
事務所はJR西荻窪から徒歩1分で気軽に立ち寄っていただける立地です。当事務所の対応エリアは以下の通りです。
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