おひとり様のかしこい終活
ゼロから始めるおひとり様のエンディングノート

おひとり様のかしこい終活 ゼロから始めるおひとり様のエンディングノート

「おひとり様の終活・エンディングノート」というと、人生の最後をイメージさせるようなやや暗い印象を受けるかもしれません。確かに、自分の人生の最後に向けた作業をするわけですから、暗い響きに聞こえるのも無理はありません。

しかし、実際にエンディングノートを書いてみると、これまでの人生や自身の想いや財産に関する情報を、万一のときに頼ることになる人に伝えるための準備を行いつつ、自分の過去を振り返り、これからの人生を考えるきっかけにもなることが多いようです。

実際、人生の終盤を考えるためのツールとしてエンディングノートを活用している人は増えており、70歳以上になると2人に1人がエンディングノートを作成する意向を持っているというデータもあります。

本記事ではエンディングノートを活用した上手なおひとり様の終活と注意点について分かりやすく解説していきます。

目次

エンディングノートの役割は?
おひとり様のエンディングノートはどんなタイプがおすすめ?

おひとり様にとってのエンディングノートは、今後終活をする中でこれまでの人生を振り返り、自分の考えや想いをまとめて残しておく備忘録としての役割が大きいと言えます。

エンディングノートに決まった形式はなく、普通のノートや手帳に想いを残していくことも可能です。パソコン等に習熟している人なら、エクセル等で自作することも可能です。

ただ、おひとり様の死後を託されることになった人にとっては、ある程度まとまった形のエンディングノートがある方が、スムーズな死後事務手続き等を行うことができます。

エンディングノートは様々な価格・様式のものリリースされています。また、パソコン・アプリタイプのものもありますので、自分の好みや目的に応じて選定するとよいでしょう。

エンディングノートのタイプ別の特徴

1.薄手の手書きタイプ 2.ファイル式タイプ 3.パソコン・アプリタイプ
  • 初めてエンディングノートを書く方向け
  • 市町村が無料配布していることも
  • 財産整理・財産整理からエンディングノートを書きたい方向け
  • リフィルを活用すれば、情報の追加・削除が容易
  • パソコン・スマートフォンの操作が苦にならない人向け
  • 無料でダウンロード・利用できることも

エンディングノートには
どんな内容を書いておくべき?

エンディングノートの記入に際しては下表のとおり、A.基本的な情報、B.財産に関する情報、C.その他の情報の3つに分けて記入するといいでしょう。

エンディングノートに書いておくべき内容

A.基本的な情報 B.財産に関する情報 C.その他の情報
  • 住所地・本籍地、家族など
  • 法定相続人に関する情報
  • 遺言書の有無
  • 親戚・知人・友人・勤務先の連絡先
  • 趣味・ペットに関すること
  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式・投資信託
  • 生命保険
  • 借入金・貸付金
  • クレジットカード
  • 終末期の医療に関する希望
  • 葬儀・納骨・埋葬の希望
  • PC・携帯電話
  • サブスクリプション契約
  • 家族へのメッセージ

1.基本的な情報 -法定相続人・遺言の有無は必ず記載しましょう-

死後を託された人がスムーズに手続きを取れるよう、まず、おひとり様自身の情報を整えておきましょう。

まず、自身の住所地・本籍地に関する情報、法定相続人に関する情報は最低限記載するようにしましょう。

中でも法定相続人に関する情報は極めて重要です。法定相続人に関する情報が不明な場合、遺体引取り・火葬をはじめとする葬儀手続きや、遺産分割協議などに多くの労力が割かれることになります。

また、法定相続人がいない、または法定相続人に財産を渡したくないなどの理由で、法定相続人以外の人に遺贈・寄付等を行う場合、遺言書が欠かせません。

遺言書を作成した場合は、遺言書の有無および保管場所についても記載しておきましょう。

2.財産に関する情報 -お金の貸し借りは生前に自分で整理!-

預貯金、株式・投資信託については、預け入れている金融機関名や支店名、口座番号等をまとめておきます。

生命保険契約は保険の種類(保険名称)、保険会社、連絡先・担当者名、受取人名を記載します。いずれも、通帳・証券と印鑑の保管場所は分け、それぞれの保管場所を記載しておく方が安全です。

オンライン取引がある場合はID・パスワードも重要な情報です。特にパスワードはエンディングノートには直接記載せず、別に管理を行った方がよいでしょう。

不動産については、名義、住所に加え、種類、用途(自宅、別荘、事務所、投資など)などの情報も記載します。賃貸に供している場合などは、利用者の連絡先(利用者や管理者が別にいる場合)も書いておきましょう。

悩ましいのが貸金・借金に関する情報です。お金の貸し・借りに関する情報を記入しておくことが重要なのは言うまでもありません。

ただ、死後その整理を託された側にとっては返済・回収ともに重たい話です。貸金・借金ともに生前自身が元気なうちに整理しておいた方がよいでしょう。

3.その他の情報 の書き方 -医療・介護・葬儀に関する希望-

その他の情報欄では、終末期の医療に関する希望と葬儀・納骨・埋葬の希望を書いておきましょう。

特に、葬儀・納骨・埋葬については、健康なうちに自身で葬儀社とコンタクトをとり、自身の希望を告げた上で予算を決めておき、その内容を記載しておくと安心です。

最近ではおひとり様を想定して、海に散骨、樹木葬などを営むケースもあり、葬儀・お墓の選択肢は増えています。自分の最後をどのように迎えたいのかエンディングノート書きながら考えてみるとよいでしょう。

あわせて、自分のこれまでの人生の出来事や周囲への感謝の言葉や、ペットを飼っている人の場合はペットの取り扱合いに関する希望などもその他情報として記入しておくとよいでしょう。

タイプ別おすすめのエンディングノート・その1
薄手の手書きタイプのエンディングノート

エンディングノートには決まった書式はありませんが、普通のノートだと、何から書き始めていいかわからないことも多い上に、市販のエンディングノートでも、記入項目が多いものだと、なかなかペンが進まず、途中で挫折してしまうこともあるようです。

初めてエンディングノートを書くときに、おすすめのエンディングノートその1は「薄手の手書きタイプ」のエンディングノートです。

書き初めの段階でつまずかないためにも、初めてエンディングノートを選ぶときは、ページ数の少ないシンプルな薄手のものがおすすめです。

1.薄手の手書きタイプのエンディングノートのメリットは安いこと!中には無料のもの!?

ページ数の少ないシンプルな薄手のものであっても、押さえるべき項目は網羅されており、その通りに書き進めていくことで完成できるようなつくりなっているものが多く、スムーズに進めていくことができるでしょう。

何よりも価格面でも手ごろなものが多く、安いものだと数百円で購入できますので、気軽に始めるのには最適です。

市町村が無料のエンディングノートを配布していることもあり、これを利用するのも一手です。一度お住いの市区町村のホームページなどで調べてみるといいでしょう。現物のエンディングノートは、その市町村の居住者だけに配布されていますが、ダウンロードはその市町村に住んでいなくても可能な場合が多いようです。何よりも無料で始められるといことはありがたい話です。

※ご参考 武蔵野市の「わたしのエンディングノート」

2.紛失・盗難に注意!手書きタイプのエンディングノートの保管は厳重に!

手書きタイプのエンディングノートは紛失・盗難リスクがあるため、厳重に保管する必要があります。

中でも、預貯金等財産に関する情報を記載する場合は、通帳と印鑑は分けて保管する、パスワード等は別管理にするなど紛失・盗難への対策を施しておいた方がよいでしょう。

タイプ別おすすめのエンディングノート・その2
ファイル式エンディングノート

証券や通帳などの財産管理を中心にエンディングノートを書きたい方には、同じ市販タイプのものでも、ファイル式のエンディングノートを選ぶとよいでしょう。

1.ファイル式エンディングノートのメリット 一括管理と加筆・削除が簡単

ファイル式エンディングノートの場合、書類や通帳・カードを入れておくリフィルページなどが用意されていますので、預金通帳やクレジットカード、生命保険証券などをまとめて保管することもできます。

自身の財産を一括管理することができ、死後事務を託された人がスムーズに手続きを進めることが期待できます。もちろんフリー記載欄もありますので、ノートタイプのエンディングノート同じような使い方も可能です。

書き進めていく中で、追加したいことや削除したいことが発生した場合でも、リフィルごと追加・削除できるので、エンディングノートを徐々に書き進めながら、想いを記していくことができます。

リフィルページを上手に活用すると、自身の葬儀用写真や生前の動画をCD/DVDに記録して保存しておくこともできます。

エンディングノートで財産整理を進めつつ、充実した内容に整えたい人などは、ファイル式のエンディングノートが適していると言えます。

2.ファイル式エンディングノートはここに注意!

ファイル式エンディングノートのデメリットは、薄手のノートタイプのものに比べるとやや高いことです。

また、預金通帳や生命保険証券とセットで保管されることが多いため、薄手のノートタイプ以上に滅失リスクに加え、盗難リスクへの備えも必要です。秘匿性の高い個人情報を分離して保管できるタイプのエンディングノートもあるので、本冊とは分けて保管しておいた方がよいでしょう。

タイプ別おすすめのエンディングノート・その3
パソコン・アプリタイプのエンディングノート

スマホの普及に伴い、パソコン・アプリタイプのエンディングノートも広く利用されはじめており、終活アプリと呼ばれることもあります。

1.パソコン・アプリタイプのエンディングノートは手軽に始められる

パソコン・アプリタイプのエンディングノートは、手軽に始めることができ、続けやすいことから、スマートフォンやパソコンの操作が苦にならない人にとっては便利なツールと言えます。

自動バックアップ機能も搭載していることが多く、滅失・盗難リスクも低いと言えます。

また、エンディングノートという名称は用いられていませんが、マネーフォワードMEに代表されるような家計簿アプリも、財産管理の機能においてはエンディングノート同様の効果が期待できます。

2.パソコン・アプリタイプのエンディングノートは定型的で記入がラク?

一方、パソコン・アプリタイプのエンディングノートは書く内容があらかじめ決められているものが一般的です。そのため、指示通りに入力することで、スムーズな記録ができます。

一方で、想いを自分なりにカスタマイズして遺したい場合などは、自由度が低いためやや物足りない印象があるかもしれません。

3.パソコン・アプリタイプのエンディングノートにもリスクはある?

パソコン・アプリタイプのエンディングノートには便利さゆえの固有のリスクがあります。第一に、エンディングノートの存在を知られない可能性が高くなることです。アプリタイプのエンディングノートは手書きノートやファイルタイプのものと異なり、実物がありません。

そのため、誰にも知らせないでスマホ・パソコン内にエンディングノートを残したような場合、その存在に気づかれず、所期の目標を達成できない可能性が高まります。

第二に、サービス終了の危険性が挙げられます。せっかく整えていたエンディングノートがある日突然使えなくなるリスクです。また、サービスを終了しないまでも、無料だったものがある時期を境に有料化されることもあり得ます。

おひとり様の終活はエンディングノートだけで大丈夫?
遺言は不要?

おひとり様が自分の人生を振り返り、想いを遺すツールとしてエンディングノートが終活に極めて有効であることがお分かりいただけたと思います。

果たして、エンディングノートを書いておけばおひとり様の終活は万全なのでしょうか?

1.エンディングノートに法的効力はあるの?

エンディングノートに自分の保有する財産やその相続割合ついて記載することは可能です。

しかし、残念ながらエンディングノートに書いた内容自体はおひとり様の「希望」に過ぎません。法的効力は一切なく、遺言書のような効力を期待することはできないことはもちろん、エンディングノートに記入した通りに遺産分割を実行してもらえなかったとしても、法的責任を問うことはできません。

エンディングノートはあくまで「希望」を残すもので、必ず希望通りに実行してもらえるとは限らないということを押さえておきましょう。

おひとり様が死後に法定相続人以外に財産を遺贈する場合や特定の団体に寄付を行う希望がある場合は、エンディングノートだけでは足らず、遺言が必要になります。

2.エンディングノートでつくれる遺言に法的効力はあるの?

エンディングノートの中には、遺言を整える機能を有しているものもあります。法的に有効な遺言書には大きく「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。

このうちエンディングノートで整えた遺言は「自筆証書遺言」になります。自筆証書遺言」は、本人が自筆のみですべての記載を完了させた遺言書で、法的効力があることには間違いありません。

しかし、「自筆証書遺言」の場合、発見者が自分の都合のよいように改ざんするリスクがあることから、開封前に家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。(2020年7月よりスタートした自筆証書遺言の保管制度の利用がある場合は不要)

エンディングノートでつくった「自筆証書遺言」だと、いざ遺言執行の段になった時に、様々な手続きに加え、無効になるリスクもあることを踏まえておく必要があります。

3.安全・確実な遺言を残すためには「公正証書遺言」

改ざんされたり、無効になるリスクの高い自筆証書遺言に対して、「公正証書遺言」は安全・確実に遺言を残すことができるとされています。「公正証書遺言」ならば形式上の不備や書き間違え等で無効になることがないことに加え、公証役場で保管されるので、紛失、変造、偽造、破棄などのリスクがないためです。

また、家庭裁判所の「検認」が不要で、すぐに遺産分割ができるなど自筆証書遺言に比べ安心感が高いのが特徴です。「公正証書遺言」は通常、公証役場へ出向いて公証人に作成してもらいます。

そのため、手間と費用がかかるものの、まぎれのない終活を目指すおひとり様にとっては相続対策の事前準備としてエンディングノートを整えることに加えて、公正証書遺言で遺言を整えておいた方が安心でしょう。

エンディングノートを書くことは、おひとり様がこれからの人生においてどのようなことに備えておけばいいか、あらかじめ考えておくことになり、ご自身だけでなく周囲の方のためにもとても有意義なことと言えます。同時に、これまでの人生を振り返りながら、これからの人生をどのように「自分らしく」過ごしていきたいか、考えるきっかけにもなるでしょう。

一方で、法定相続人以外の人に、おひとり様の「想い」を形にして遺すためにはエンディングノートだけでは足らず、遺言が欠かせません。

しかし、どのような遺言が適切なのか、事前準備どんな準備を行えばいいのか、一人で判断するのは難しいため、必要に応じて相続に詳しい税理士等の専門家に相談することもおすすめです。

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