相続時の配偶者居住権の上手な活用方法と注意点

2022年厚生労働省から発表された平均寿命は、男性81.47 年、女性87.57年と前年と比較してわずかに低下しました。しかし、高齢化は進んでおり、夫婦の一方(特に夫)が亡くなった後、残された妻が長期間にわたり生活を継続するケースも増えています。
夫が死亡した後も、住み慣れた住居で生活を続けたいという気持ちと、老後の生活資金として預貯金等の資産も確保したいという気持ちの両方を持つ人が多いでしょう。しかし、相続が発生し、遺産分割協議を行った際に、残された妻が老後の生活資金を確保するために自宅の相続をあきらめざるを得ないケースもあります。
配偶者居住権を活用すると、住居を確保しつつ、バランスのよい遺産分割を実現できるほか、相続トラブルの回避にも役立ちます。一方で、誤った使い方をすると、期待する効果が得られないどころか、税負担の増加につながることもあります。本記事では、配偶者居住権の背景、活用事例、注意点を解説していきます。
配偶者居住権が生まれた背景について
2020年の民法改正により、遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者が無償で住み慣れた住居に居住する権利である「配偶者居住権」が創設されました。
配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまで、または一定の期間、無償で居住できる権利です。この権利は登記を行うことで第三者に対抗できます。
従来、配偶者が死亡した後に、自宅を相続しなかった場合の選択肢は以下の2つでした。
- 自宅を相続した人に対し、賃料を支払い、有償で賃借人として居住する(賃貸借)
- 相続人である所有者に賃料を支払わず無償で居住する(使用貸借)
しかし、賃貸借の場合は毎月の賃料が発生し、使用貸借の場合は退去リスクが伴うため、高齢者にとっては安心できる選択肢ではありませんでした。これを解決するために配偶者居住権が創設されました。
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配偶者居住権を設定するときの注意点
- 配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要
- 配偶者居住権は譲渡や賃貸ができない
- 維持・修繕費用の負担は協議が必要
- 生前放棄すると贈与税が発生する可能性がある
まとめ
配偶者居住権の設定は、適切に行えば、配偶者の住居確保とバランスの取れた遺産分割を実現できます。しかし、手続きが複雑であるため、専門家のアドバイスを仰ぐことが重要です。
杉並・中野相続サポートセンターでは、配偶者居住権の活用を含めた相続対策に関する相談を受け付けています。初回無料相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。