どうする!? 誰も住まない実家を相続! 空き家問題の今とお金の関係

どうする!? 誰も住まない実家を相続! 空き家問題の今とお金の関係

空き家問題という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
総務省の住宅・土地統計調査によると、国内には2018年時点で空き家は約849万戸もあり、住宅総数に占める割合は13.6%に達しています。およそ7戸に1戸が空き家という水準にまで達しています。
近い将来、住宅総数が世帯数に対し、約1000万戸も余る時代が到来するとも言われています。
相続税を納めるまでもないけど、空き家になった実家を相続することになってしまった、という人も多いかもしれません。
本記事ではそんな人のために空き家問題の今とお金にまつわる話題を解説していきます。

1.空き家問題の今と法律「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」

空き家はなぜ発生するのでしょう。
実は空き家が発生する原因の過半が相続によるものといわれています。
相続が発生し、空き家になった実家を相続したとしても、相続人自身は別に生活拠点を構えている場合など、実家に住むことは難しく、結果的に空き家となってしまうことが多いようです。
人が住まない家は傷みが出やすく、老朽化も進み、近隣の景観を損なうのみならず倒壊のリスクが高くなり、最悪の場合人に損害を与える可能性すらあります。また、火災リスクなどセキュリティー面でも不安な要素が強くなる傾向が高いとされています。

この空き家問題は国にとっても大きな課題として捉えられており、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」が施行さました。
空家特措法では、『そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等』を特定空家等と定義し、行政の判断で所有者に対し、適切な措置を求めることができるようになりました。

行政が特定空き家の所有者に対してできる措置は、軽いものから ①助言・指導、②勧告、③命令、④行政代執行、⑤略式代執行の5段階があり、「勧告」に従わない場合は、「固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例」の適用対象から除外され、「命令」に従わない場合は、50万円以下の過料が課せられとされています。
また、「行政代執行」や「略式代執行」によって、特定空家等の除却等を行政が行うことが可能になりました。

空家特措法の成果検証を目的に、令和4年に国土交通省が実施した調査では、1741市区町村のうち、空き家対策に関する計画は1,397市区町村(80%)で策定されたほか、行政代執行や略式代執行も含めた措置の数は合計33,943件に上り、142,528件の管理不全の空き家の除却や修繕等が実施されるなどの一定の成果が報告されています。
一方で現在の空き家数(約849万戸)から見たときの比率や、空き家の数は今後増加する傾向などから見た場合、課題解消までの道のりはまだこれからとみるべきではないでしょうか。

もし、誰も住まず空き家となった実家を相続したら、どういうことが起こるのでしょう。
次章では空き家を相続した時のお金にまつわる課題について詳しく見ていきたいと思います。

2.こんなにかかるの!?誰も住まない実家を相続すると発生する様々な費用

誰も住まない実家を相続して、所有し続けることになった場合に想定される費用についてみていきましょう

(1)固定資産税・都市計画税

土地・建物を所有すると、原則としてその年の1月1日時点の所有者に固定資産税・都市計画税が課されます。
ただ、多くの住宅には「固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例」が適用され、固定資産税についてはその評価額が「小規模宅地」(敷地面積200平米まで)では1/6に(都市計画税については3/1)に、「一般住宅地」(200平米を超える部分)では1/3(同2/3)に軽減されています。

「固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例」はあくまでも生活の基盤であるマイホームを所有している人を想定した特例です。空き家であっても建物が存在すれば適用可能ですが、更地にしてしまうとこの軽減措置は受けられなくなります。
また、建物が建っている場合でも、「空き家対策特別措置法」によって規定された空き家、いわゆる「特定空家等」に指定されてしまった場合は、軽減税率の特例が適用されず、固定資産税は大幅に上がってしまう可能性があります。

(2)維持費・その他

税金以外にもかかるのが維持費です。人が住んでいないと家は傷みます。家の傷みを軽減するために月に1度は換気をしたり、水道の水を流したりするために空き家を訪れるためのコストが所有者に発生します。
庭の草木の手入れや塀の管理も重要です。こうした空き家の手入れを業者等に依頼する場合に費用がかかるほか、樹木や塀が倒れて損害が発生した場合では、賠償責任を問われることになる可能性もありますので、万一に備えた火災保険料の負担も発生します。

3.賃貸?売却 空き家を相続した時に取るべき方法 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を使った売却

このように誰も住まなくなった空き家を相続した場合、ただ所有しているだけで様々なコストが発生することが分りました。
短期間ならまだしも、長期にわたって負担するコストは重く家計にのしかかってくることは間違いありません。
誰も住まなくなった空き家をどうするべきか、解決策についてみていくことにしましょう。

(1)空き家を賃貸に供する

都市部などの住宅を相続した場合には、賃貸に供することで収益を得る道もあります。
固定新税負担や維持費は引き続き大家である相続人の負担となりますが、少なくとも特定空き家に指定されるリスクはなくなります。
ただ、複数人の共有で相続した空き家を賃貸に供した場合は、収益・費用負担配分など煩雑な手続きが増えるほか、一人でも売却を望む相続人がいる場合などは相続人間で争いに発展する可能性もあります。

住まない家を相続して所有し続けた場合、たとえ賃貸に供したとしても、一定程度負担感があることを踏まえておく必要があります。
また、空き家が郡部に所在する場合はたとえ賃貸に出したとしても借り手がつかないことも予想されます。

(2)空き家を売却する

売却することの最大のメリットは、固定資産税や維持管理に係る費用の支払いがなくなることです。
また、高値で売れた場合は売却益が得られる可能性があります。

この場合、売却時の税金が気になります。

不動産をはじめとする相続財産を売却して得た所得は譲渡所得として課税されます。
被相続人の取得時期が譲渡した年の1月1日時点で5年以上経過している場合長期譲渡所得として計算され、他の所得とは分離して課税されます。(取得時期および取得価額は被相続人のものを引き継ぎます。)

取得費が分らない場合は売却価格の5%を取得費とします
仮に6000万円で売却できたような場合は、300万円を引いた5,700万円からさらに減価償却費および売却費用を控除した上で、譲渡所得を計算すると売却益が発生し、納税の可能性が高まります。

ただし、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
この特例を「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(相続空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」と呼びます。
3000万円の特別控除は相続人それぞれに適用することが可能です。
仮に3人の相続人が等分に相続し、住宅の売却価格が6000万円であった場合、各相続人の譲渡所得は0円となります。

以前は相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に限定されていましたが、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合でも、一定の要件を満たすときは適用が可能になり※、利便性が大きく向上しました。
※2019年4月1日以降の譲渡が対象

<相続空き家の3,000万円特例控除 適用対象となる家屋・敷地>

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

この3つの要件すべてに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります。)が適用対象となります。また、記載の通り、区分所有建物(マンション)は対象外となります。

4.「相続空き家の3,000万円特例控除」 適用要件と注意点

次に「相続空き家の3,000万円特例控除」の主な適用要件と注意点をみていきましょう。

(1)空き家を売った人=相続人であること

相続人が家屋と土地を一体で相続したことが必要です。なお、相続税納付の有無は問われません。

(2)更地化または耐震補強後の引き渡しであること

家屋・敷地を一体として売却することが必要なほか、家屋を取り壊し、更地にしたうえで売却するか、取り壊さない場合は一定の耐震基準を満たすようリフォーム等を施した住居であることが必要です。
また、取り壊しをする場合は、引渡し前までに取り壊しを完了させることが必要なほか、相続した後に賃貸に供した場合や、相続人自身が居住した場合は適用対象外となります。

(3)売却代金が1億円以下であること。

分割して売却した部分や、他の相続人が売却した部分も含めた売却代金の合計が1億円以下であることが必要です。買主側が取り壊し費用等を負担する場合などはその金額も含めた金額で判定されます。

言うまでもありませんが、「相続空き家の3,000万円特例控除」の適用を受けようとする時は、相続人それぞれが制度適用の申請書を整え、かつ確定申告することが必要です。

<今回のまとめ>

  1. 空き家問題の現状と「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」
  2. こんなにかかるの!?誰も住まない実家を相続すると発生する様々な費用
  3. 賃貸?売却 空き家を相続した時に取るべき方法 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を使った売却
  4. 「相続空き家の3,000万円特例控除」 適用要件と注意点

相続税を納める必要がないレベルの相続であったとしても、相続した財産の種類によっては相続人に思わぬ負担が発生する場合があります。特に空き家になった実家のような不動産の相続は“負”動産になるリスクもあります。
また、相続時点では相続人間の関係が円満であったとしても、共有で不動産等を相続した後の維持・管理や売却手続きを巡り、関係が悪化することもあります。
様々な事後トラブルを回避するためにも、早い段階から相続税に詳しい専門家に相談し、対策を講じておくことが最善の策と言えます。
相続専門の税理士に相談すれば、資産状況や相続人の状況に合った対策を提案してもらえます。計画的な贈与や、将来相続が発生した場合の不動産の評価や売却、相続税申告など複雑な作業も専門家ならではのアドバイスが得られます。

杉並・中野相続サポートセンターでも、相続税対策としての不動産の購入・売却を始めとした様々な相続税対策や申告業務を行っております。
相続手続きや相続税申告にお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
当サポートセンターの対応エリアは以下の通りです。

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