【2022年税制改正】住宅ローン控除 こう変わった 住宅性能と入居時期で大きく変わる控除額

【2022年税制改正】住宅ローン控除 こう変わった 住宅性能と入居時期で大きく変わる控除額

2022年税制改正において住宅ローン控除制度が見直され、所得要件が引き下げられたほか、省エネ基準を満たさない新築住宅がローン控除対象外になるなど、住宅購入に関して大きな影響がある見直しがなされています。
初めて住宅を購入する人にも、買い替え・住み替えを検討している人も押さえておくべきポイントをまとめてみました。

1.住宅ローン・住宅ローン控除とは?そして2022年度 見直された制度の概要は?

住宅を現金で購入する人はごく限られた人だと思います。
多くの人は一定の頭金を用意した上で、残額を金融機関等から借り入れを行うなどして購入するケースがほとんどだと思います。
住宅ローンとはその名の通り、住宅を買ったり改築したりするために金融機関から借りるお金のことです。
住宅を購入する場合には、ほとんどの人が住宅ローンを利用し、そして月々の返済をしていくことになります。

ローンは金融機関からの借金ですから、そこには当然利息がかかります。
住宅ローンを利用して住宅を購入した場合に、年末時点での住宅ローンの残高の一定額が、入居時から一定の期間、所得税や住民税から控除される制度のことです。
「住宅ローン控除」または「住宅ローン減税」として知られる制度ですが、正式名称は「住宅借入金特別控除」です。
金融機関等から資金を借り入れ、住宅を取得する人の家計負担を軽減し住宅所得を支援する制度として定着しています。別荘や投資用の不動産の購入に際しての借り入れには適用されませんので注意が必要です。

さて、この住宅ローン控除が令和4年(2022年)税制改正を受けて見直しが行われました。
見直し後の住宅ローン控除は従来の制度と比べ、適用期間の延長(10年→13年 )、控除率の見直し(1%→0.7% 引き下げ)、住宅性能に応じた借入金残高上限の設定などが実施され、2025年末までに入居した住宅を購入した人がその恩恵を受けることができます。

<改正前後比較表>

要件 改正前 改正後
入居期限 2021年末まで 2025年末まで
控除率 1.0% 0.7%
控除期限 新築 13年 原則13年
中古 10年 10年
所得要件 合計所得合計
3,000万円以下
合計所得合計
2,000万円以下
床面積 50㎡以上(合計所得金額が1,000万円以下等の要件を満たす場合は40㎡以上

2.控除期間の延長の恩恵と引き下げられた控除率 高所得者には逆風も

まず1点目は控除対象期間の延長です。
住宅ローン控除の対象期間は厳しい経済環境や長期化する新型コロナウィルスの影響に配慮した結果、新築住宅の場合、10年間から13年間に延長され、住宅取得を目指す人には嬉しい見直し内容となりました。

2点目は控除率の引き下げです。こちらは嬉しい話ではありません。
特に、高所得層には逆風が吹きます。
長引くマイナス金利の情勢下、各金融機関の住宅ローン金利を見渡してみると、1%を切ることが当たり前になってきています。(変動金利の場合)
そのため、実際に支払う金利以上に控除額が大きくなってしまう「プラスの逆ザヤ」現象が起こっていることが問題視されました。特に、高所得層が意図的にこの「プラスの逆ザヤ」の恩恵を受けようとして、借り入れる必要のない金額まで住宅ローンを借り入れるケースが散見されたことから制度に対する批判的な声も少なくありませんでした。
今回の制度見直しにおいては、高所得者優遇との批判なども考慮し、控除率は1%から0.7%に引き下げられました。
あわせて、住宅ローン控除の対象となる合計所得金額上限は従来3000万円でしたが、2000万円に変更され、高所得層の利用にはハードルが課せられることになりました。

3.控除対象の借入金上限に格差が? 住宅性能と入居時期に要注意

住宅性能による控除対象となる借入金残高上限についても見直しが行われました。

政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、省エネ住宅の普及を促す狙いが今回の改正の背景にあります。
新築の場合、認定住宅2022年~2023年の入居については従来と変わらず5000万円が限度額となります。
次に限度額が大きくなるのはZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅※で4500万円が限度額となります。
※Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、「エネルギー 収支をゼロ以下にする家」。家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで造るエネルギーをバランスして、年間で消費する一次エネルギーの量を実質的にゼロ以下にすることを目指した住宅。
一定の省エネ基準を満たした省エネ基準適合住宅で4000万円、省エネ基準を満たさない住宅では3000万円と大きな差があります。
(2024年~2025年の入居の場合それぞれ500万円~1000万円減額されます)
購入を検討している住宅メーカーの提供する情報で省エネ性能を確認することがとても大事になってきます。

省エネ基準に対する政府の厳しい見方が見て取れます。
ただ、省エネ基準を満たさない住宅であっても、2023年までに建築確認を受けた新築住宅に限り住宅ローン控除の対象になります。(2024年以降の建築確認の場合、登記簿上の建築日付が2024年6月30日以前であれば適用対象)この場合、建築確認の日付、登記簿上の建築日付で判定されますので注意が必要です。

4.2022年住宅ローン控除制度の見直し 有利になるのはどんな人? 不利になる人は?

控除期間が13年間に延長されたことで、長期の住宅ローンを組んで住宅を取得する層や認定住宅など住宅性能が高い住宅の購入を検討している人には追い風になりそうです。

住宅ローン控除は自身の支払う所得税・住民税(上限あり)の金額が上限です。
自らの所得税・住民税額が控除率上限(1%)金額に達していないため控除率1%まるごとの恩恵を受けられていない人にも控除期間の延長は有利な改正です。

一方で、高所得者層の中には、今回の見直しで合計所得額基準が3000万円から2000万円に引き下げられたことで、住宅ローン控除対象外となってしまい、不利になるケースが増えそうです。(2021年度末までに入居している場合は特に影響はありません。)

5.住宅ローン控除手続きの簡便化・終了したお得な制度

円滑・適正な納税のための環境整備という観点から、住宅ローン控除を受ける際の手続きが簡素化されました。
従来確定申告や年末調整で住宅ローン借入金の年末残高証明書の提出が必要でした。また、対象となる住宅には建築年数要件(木造等築20年以内、マンション棟25年以内)がありました。

年末残高証明書については金融機関が税務署に対し残高を記載した調書を提出し、税務署が納税者に対し住宅ローン控除証明書を発行する形になり、簡便化が図られます。
築年数要件については、登記簿上1982年1月1日以降の中古住宅は新耐震基準に適合しているとみなされ、耐震基準証明書の提出が不要となり、簡便化と同時に購入時のコストも削減することが見込まれます。

2022年度改正では省エネ性能基準を満たさない新築住宅については控除額上限が引き下げられるなど厳しい改正となります。
加えて、消費税率の引き上げ(2016年)に伴う住宅支援制度として実施されてきた「すまい給付金制度」は2021年12月まで終了し、一定の環境に配慮した住宅の購入やリフォーム工事に対し、省エネに優れた商品と交換できる「グリーン住宅ポイント制度」も2021年12月15日でポイント交換は終了しています。

マイホームは人生最大の買いものと言われます。
住宅ローンを組んで購入する場合は、物件の善し悪しはもちろんのこと、住宅ローン控除をはじめとする住宅取得に関連する様々な支援策の内容を理解した上で判断することが重要です。

<今回のまとめ>

  1. 2022年度税制改正において、住宅ローン控除制度が見直され、対象期間が4年間延長され2025年末まで入居に延長された。
  2. 控除率は1.0%から0.7%に引き下げられ、1年間で受けられる控除総額は減少した。
  3. 住宅性能・入居時期によって対象となる借入金残高上限が異なるようになった。
  4. 所得要件(従来合計所得金額3000万円)が引き下げられ、2000万円となり、高所得層の中には住宅ローン控除の適用対象外となるケースも発生し得る。

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