日本の億万長者について
富裕層の人数・割合・変化を税理士事務所が解説

コラム, 新着情報

億万長者(おくまんちょうじゃ)とは、非常に多くの資産を持つ個人を指す言葉です。海外では「ビリオネア(billionaire)」と呼ばれ、周囲から羨望の目で見られることも珍しくありません。

本記事ではその昔、従来の経営者・地主型の富裕層に代表されていた日本の“億万長者”の実態が現在どう変化しているのかについて解説していきます。

日本の億万長者の人数・割合とは

日本の富裕層・5つの階層は“純金融資産”で判断

野村総合研究所(NRI)が2025年2月に発表した最新のレポート「新たな富裕層タイプと金融機関のアプローチ方法」によれば、日本における”富裕層”および”超富裕層”の数が増加傾向にあることが明らかになりました。

野村総合研究所(NRI)では、世帯が保有する”純金融資産”に基づいて5つの層にピラミッド型に分類しています。

世帯が保有する”純金融資産”に基づいた5つの層

ここでいう”純金融資産”とは預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借り入れなどの負債を差し引いたものを指します。

突出する富裕層・超富裕層と勃興するアッパーマス層

超富裕層と言われる純金融資産5億円超の割合は約11.8万世帯と世帯全体(約5,373万世帯)に占める割合は約0.2%です。また富裕層と言われる純金融資産1億円~5億円の層の割合も153.5万世帯と世帯全体に占める割合は約2.9%です。

このように、富裕層や超富裕層は数の上では全体に占める割合はごく一部であるものの、保有する資産額では、超富裕層が約131兆円、富裕層が約338兆円と全体の約6割強を保有しているとのデータが示されています。

また、アッパーマス層といわれる3,000万?5,000万円の増加も加速しており、富裕層予備軍として今後の資産運用やライフプランの充実次第で上位層へ移行する可能性を秘めています。

調査年度ごとに見る富裕層ピラミッドの推移

最新のレポートを2009年の調査と比較したデータは以下の通りです。超富裕層、富裕層とも大きく増加していることが分かります。

超富裕層・富裕層世帯数の増減幅(2009年~2023年)

区分 2009年 2023年 増減幅(2009年→2023年)
超富裕層 約4.3万世帯 約11.8万世帯 +7.5万世帯(+174%)
富裕層 約84.0万世帯 約153.5万世帯 +69.5万世帯(+82.8%)

NRI調査より抜粋

なぜ日本の超富裕層・富裕層は増えたのか?

超富裕層・富裕層の増加には以下のような要因があると考えられています。

その1株式市場が活況し、日経平均・米国株式の上昇により資産が拡大した

リーマンショック直後の2009年のデータで、日米の代表的な株価指数と現在の水準を見比べてみると、日経平均、S&P500株式指数ともに3倍~4倍という大きな伸びを示していることが分かります。

特に外国株式に代表される外貨建て資産を持っていた層は後述する円安の追い風もあり大きく資産を増やした層の代表格と言えそうです。

日米の代表的な株価指数の推移(2009年~2023年)

区分 2009年 2023年 増減幅(2009年→2023年)
日経平均(年末) 約10,546円 約33,464円 +22,918円(+217.8%)
S&P500(年末) 約1,115 約4,769 +3,654(+327.2%)

その2円安に伴い外貨建て資産が上昇し、円ベースの資産が増加した

長らく日本を苦しめた円高は国内政策(アベノミクス・3本の矢)による低金利・量的緩和を経て足元では2009年対比約5割強の円安水準になりました。円安の局面では外貨建て資産の円建て評価額は増加します。

米ドル/日本円 為替レートの推移(2009年~2023年)

区分 2009年 2023年 増減幅(2009年→2023年)
為替(1USD) 約93.04円 約141.0円 +47.96円(+51.5%)

円安には様々な弊害もあるとはいうものの、こと外貨建て資産に関しては円建ての評価額が大きく増加するという効果を発揮したことが分かります。

その3資産承継が進行し、高齢富裕層から子世代への相続が加速した

国税庁が毎年公表する「相続税の申告事績に関する報告書」からは、相続税の申告件数は、2015年の相続税法改正以降に増加傾向が見られ、その傾向が顕著に表れています。背景には高齢者の死亡者数が増加していることが一因と考えられます。

実際に相続税の課税が行われた人数と全体に占める割合の上位3件を見てみると、

  1. 東京都:2万6,008人(課税割合:18.7%)
  2. 神奈川県:1万4,127人(課税割合:14.3%)
  3. 愛知県:1万2,292人(課税割合:15.1%)

このようになっており、これらの3都県合計の相続税課税対象者数は約4万2,427人となり、全国の課税対象者数の約28.2%を占めています。

相続税の課税対象者が都市部、特に経済規模の大きい地域に集中している傾向を示しており、高齢富裕層から子世代への資産承継が進行した結果、子世代に新たな富裕層が生まれる要因になったといえます。

富裕層はどこにいる?
新たな富裕層の台頭に注目

今回のレポートでは、近年増加している新しいタイプの富裕層にも注目しています。そのひとつが、スーパーパワーファミリーと呼ばれる層です。

「スーパーパワーファミリー」とは

新しいタイプの富裕層「スーパーパワーファミリー」は都市部に居住し、世帯年収が3,000万円を超える共働き世帯を指すことが多く、概ね金融リテラシーが高く、NISA・iDeCoの活用にも積極的、という特徴があります。

「いつの間にか富裕層」も増加傾向に

新しいタイプの富裕層二つ目の層が「いつの間にか富裕層」です。この層は収入と支出をコントロールしつつコツコツ投資や企業の持株会制度などを続けていった結果、前述の株高・円安の追い風を受け続け、気づけば純金融資産1億円を超えていた層になります。退職金などの運用に成功した熟年層もこのカテゴリーに入ります。

新たな富裕層の共通点は「給与所得者」

新たなタイプの富裕層に共通するのは給与所得者であるという点です。この層は退職金も含めた運用に積極的に取り組み、経営者・地主型の富裕層とは異なった価値観と行動様式を取った結果、昨今の金融市場の追い風を得て富裕層にランクアップしていった層といえます。

貯蓄がほぼない人々の増加とその課題

約4割の世帯は貯蓄をほとんど持たない

一方で、貯蓄がほぼない世帯の増加も問題となっています。別の調査によれば、2~3割の世帯が貯蓄をほとんど持たないか、持っていても非常に少ない金額であることが示されています。

特に、大都市圏では、生活費が高く、手取りの大部分が家賃や生活費に消えるため、貯蓄に回せる余裕がないことに加え、資産運用や投資に対する知識が不足しているため、貯蓄に回す意識も希薄な層と言えます。

また、就職氷河期世帯に代表される非正規雇用やフリーランスで働く人々が増えており、収入が不安定で、貯蓄をする余裕がないことも貯金がままならない一因と言えます。

このような層は将来にわたって経済的に困難な状況に陥るリスクが高く、年金や社会保障に依存することへの不安も広がり、長期的には生活設計が立て辛い状態になる可能性があります。

富の偏在が進み、貧困層との分断も大きな課題に

富裕層の増加は経済の活力を示す一方で、社会全体で見ると、富の集中による“格差”の固定化が懸念される状況です。一部の層への資産の集中は避けられないものなのでしょうか。

今後の課題としては、資産形成へのアクセスの格差是正、相続税や贈与税の見直しによる資産の流動化、教育・金融リテラシーの底上げ、貯蓄や投資に対する意識改革といった取り組みが重要になってきそうです。

富裕層の資産管理は
税理士を上手に活用してみよう

富裕層やアッパーマス層では既に税理士の専門的サポートを得ているケースも多いと思います。ただ、その関係性は確定申告の時期だけ、という人も多くいるのではないでしょうか。

税理士を上手に活用する方法としては確定申告以外にも様々な方法があります。当事務所が実際にお手伝いした例を基にいくつか紹介してみます。

富裕層向け税務サポート事例・その1資産運用の最適化と節税戦略の立案

税理士は、投資信託や株式、不動産などの資産運用に関して、税金面を含めた最適化アドバイスを行うことができます。特に、NISAやiDeCoなどを活用した節税方法や、資産運用で利益が出た際に注意すべき税金についての知識を提供し、顧客の税負担を軽減します。

富裕層向け税務サポート事例・その2相続税対策のご提案

相続税の計算や遺産分割に関しては、専門的な知識が欠かせません。税理士は、遺産の評価額を正確に算出し、相続税を軽減するための贈与税対策や、遺言書の作成において重要な助言を行います。

富裕層向け税務サポート事例・その3資産承継の支援

税理士は、顧客の財務状況やライフプランを踏まえ、家族信託や遺言書作成の支援を通じ、世代間の円滑な資産継承をサポートできます。日本の税制は頻繁に改正されるため、税制変更への対応も資産形成においては重要なポイントとなります。

税理士は最新の税制に関する情報を把握し、顧客が不利益を被らないように対応します。特に所得税や法人税、相続税など、各税目に関して最新の制度を反映させたアドバイスを求めることが可能です。

富裕層の税金に関するご相談は
廣瀬総合経営会計事務所へお任せください

多くの経験豊かな税理士や行政書士、ファイナンシャルプランナーが在籍する廣瀬総合経営会計事務所は開業して30年以来、地域密着で様々なクライアントを支援してまいりました。

不動産オーナーや、企業経営者、個人投資家の確定申告はもちろん、突然ふりかかる相続に関する相談・申告に至るまで税金に関する課題に幅広く対応してきました。

また、各分野に精通した専門家とも連携し、確定申告や相続に関して起こりうる様々な課題への対処方法についても一括サポート可能です。廣瀬総合経営会計事務所はJR西荻窪駅・徒歩1分にあり、下記エリアを中心とした地域密着のサービスを展開しています。

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