株式分割が行われる理由と株主への影響を
税理士事務所が解説

日本を代表する株式指標のひとつ日経225平均株価は7月11日に初めて42,000円を超え、史上最高値を記録しました。

2024年1月から始まった新NISAをきっかけに株式投資を行う人が増えたことや、歴史的な円安による企業収益の改善期待などが追い風になったことは間違いありませんが、企業が株主還元策として株式分割が多く実施するようになってきたことも大きな要因といわれています。

今回の記事では株式分割が株主に与える影響や税金との関係について税理士事務所が分かりやすく解説していきます。過去記事でも代表的な株主還元策である自社株買い配当金について解説しています。あわせてご覧ください。

株式分割が株主に与える影響とメリット

株式分割とは?株式はどうやって分割するの?

株式分割とは、企業が発行している既存の株式を細かく分ける手続きです。

たとえば、1株を2株や3株に分けることで、1株あたりの株価はその分低くなる一方で、株式の総数は増えるため既存株主の資産価値は変わりません。この方式は「定額分割」と呼ばれ、ほとんどの株式分割はこの「定額分割」方式で行われています。

新たに投資する人側から見た株式分割

仮に株価が10,000円の企業があったとしましょう。購入に必要な最小単位が100株単位だった場合、投資家は100万円を用意する必要があります。

この企業が2:1の株式分割を行った場合、株価は理論上5,000円になります。購入単位は変わらず100株だったとしたら、これまでの半分50万円で投資家はこのかいしゃの株式を購入できるようになります。このように株式分割を行うことで、投資家はより手軽に株式を購入できるようになります。

ただし、株式分割を行っても企業の全体価値や、株主が保有する資産の価値は変わらないことは押さえておきましょう。

既存の株主側から見た株式分割

この企業の株式を既に100株持っていいた投資家にはどんな影響があるのでしょうか。

この場合、保有株数100株が200株に増えますが、保有する株式の時価総額は変わらない一方で、売却する場合の利便性が高まります。分割前は100株単位でしか売却できないため、手持ちの100株全てを売却しなくてはなりませんでした。しかし、株式分割後は200株の保有となるため、半分の100株のみ売却し、100株は保有し続けることが可能になります。

長期で保有し続けたい株式の場合など、分割後に一部売却で利益確定しつつ、残りは保有し続けることで将来の株価の上昇や増配を期待できるようになります。

企業側から見た株式分割

株式分割で購入単価を下げ株主数と流動性をアップさせる

今度は株式を発行する企業側の視点から株式分割をみてみましょう。株式分割をすると1株あたりの価格が下がります。特に株価が高くなりすぎたような場合、多くの投資家が購入しづらくなるため、株式分割は取引の活発化を促進します。

株式分割を行い、1株当たりの価格が下がると、投資家はより手軽に株を購入できるようになります。特に、個人投資家や小口の投資家が購入しやすくなり、幅広い投資家層を引き込むことができるようになります。こうしてより多くの株式が市場に出回るようになった結果、取引量が増加し、株式市場での流動性が向上することに繋がります。

また、株式分割は市場区分にごとの上場維持基準を満たすためにもポジティブな効果が期待できます。

現在日本の株式市場にはプライム、スタンダード、グロースの3つがあります。中でもプライム市場はスタンダード市場やグロース市場に比べて厳しい基準が設けられており、時価総額(1000億円以上)以外にも流通株式時価総額(100億円以上)、流通株式比率(35%以上)などがあります。

株式分割は発行済み株式の流動性をアップさせる効果が期待できるため、プライム市場に移行する場合の時価総額基準や流動性基準もクリアしやすくなる効果が見込めます。

株式分割で株式市場での注目度が向上

株式分割はポジティブな企業ニュースとして受け取られることが多く、投資家の注目を集めやすくなります。

特に業績好調な企業が株式分割を行う場合、投資家に対して企業の成長を示すサインと受け取られるため、株式分割は企業側から自社の好調さをアピールするきっかけづくりにもなります。

結果として、個人投資家や小口投資家を呼び込むことことができ、株主のすそ野拡大に繋がる効果が期待できます。

株式分割した企業の株価は上がるの?

株式分割はしばしば企業の成長期待を反映していると見なされ、特に株価が上昇基調の中で行われる場合、株価がさらに上昇する期待感が高まります。

しかし、株式分割自体は企業の価値や業績に直接的な影響を与えるものではなく、長期的には株価の上昇が持続するかどうかは、業績などのファンダメンタルズに依存します。

前述した通り株式分割の発表は市場の受け取り方次第で株価にポジティブな影響を与えることが多くあり、株式分割発表後の株式は人気化し、株価が上昇することが多くあります。

例えば、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは2023年3月1日付で株式1株を3株に分割しました。

分割前約83,000円だった株価は理論上一旦1/3の約27,666円になりますが、分割後1年半ほど過ぎた2024年9月末の同社株価は47,420円にまで達しています。

同社は株式分割と同時に配当金についても実質増額を発表しており、注目度を高めつつ株主還元策のレベルアップも発表しています。そのため、会社の将来業績に対する自信の表れと受け止められ、同社株はさらに人気化したといえます。

意外に難しい株式と税金の関係
迷ったときは専門家に相談しましょう

株式投資で得られる利益には主に配当金と売却益の2つがあり、それぞれに税金が課されます。いずれの利益も、保有している口座が特定口座であれば、証券会社が特定口座で源泉徴収を行っているため確定申告は不要です。

ただし、売却損が出て口座間の損益通算や繰越控除などを利用する場合は、確定申告を行う必要があります。株式取引で損失が出た場合、他の利益と相殺(損益通算)し、確定申告することで税金の負担を軽減できます。

関連サイト国税庁「株式・配当・利子と税

例えば、配当金や売却益で利益が出ても、他の株式取引で損失があれば、それを差し引いて税額を計算できますし、損失が残った場合は、翌年以降3年間繰り越すことができ、将来の利益と相殺することができるため節税効果が期待できます。

できることなら納める税金は少しでも少ない方が嬉しいのは間違いありませんが、確定申告で株式の売買を申告するのは、慣れない人にとってはややハードルが高いかもしれません。

廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、土地や株式の売買に際して発生する資産関連の税に関する様々なご相談に加え、杉並・中野相続サポートセンターの運営母体として相続に関する相談もお受けしています。

また、各分野に精通した専門家とも連携し、税金に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスから記帳・申告までワンストップでサポート可能です。

当事務所は西荻窪駅から徒歩1分の便利な場所に事務所があり、開業して30年来地域密着で数多くのお客様をサポートしてまいりました。株式の譲渡や不動産の譲渡など資産関連の税金に関する疑問やお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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