クラウドファンディングでスタートアップを応援! 身近になった未上場株式取引

クラウドファンディングでスタートアップを応援! 身近になった未上場株式取引

野村総合研究所が3年おきに実施している「生活者1万人アンケート」からの推計によると、25~69歳の男女のうち21.1%が株式投資を行っており、その数は年々増加する傾向にあるようです。NISAやiDeCoが普及したことで、若い人たちにも株式を中心とした投資活動が拡がり、すそ野が拡大したことが主な要因のようです。
しかしながら上場していない株、すなわち「未上場株」の売買はかなり敷居が高いのが実情です。

この未上場株の購入の敷居を大きく下げてくれたのが法改正によるクラウドファンディング仲介会社の誕生です。
ただ、身近になったとはいえ、上場株式等の売買に比べると注意点も多いのも事実です。
本記事ではクラウドファンディングの仕組みと未上場株式を売買する際の注意点について解説していきます。

<今回のポイント>

  1. クラウドファンディングって何?その歴史と仕組みをざっくり解説
  2. クラウドファンディング仲介業者とは?資金調達実績は?
  3. 株式型クラウドファンディングのメリットとデメリット エンジェル税制の拡充でさらに追い風!?

1.クラウドファンディングって何?その歴史と仕組みをざっくり解説

クラウドファンディングはある目的のために、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集めることの総称で、クラウド(crowd:群衆)とファンディング(funding:資金調達)をあわせた造語です。
欧米では当たり前の寄付行為がネットを通じて進化した形態であり、2000年代のアメリカで始まったとされています。インターネットを通じて、自分のプロジェクトを公開し、出資者から資金提供を受けることができるため、自己資金がなくても、プロジェクトの遂行が可能となります。
アメリカのオバマ元大統領は選挙資金調達にこのクラウドファンディング利用したこともよく知られています。
また、日本では、2011年(平成23)の東日本大震災で支援金集めの手法として用いられたことから注目されました。
その中で、イギリスでは株式投資型CFが誕生し、スタートアップの有力な資金調達手段として再度注目を集めることとなり、今後も世界中でその市場規模は大きく拡大することが予想されています。

クラウドファンディングには以下の3類型があるとされています。

<クラウドファンディングの3類型>

類型 寄付型 購入型 投資型
概要 投資に対する見返りはない 投資先の製品やサービスの提供を受ける 特定事業に投資し株式や配当金を受け取る

また、クラウドファンディングでは、あらかじめ調達する資金額や期間を設定し、期限までに目標金額を達成できなかった場合は、プロジェクトが無効となる「All or Nothing」方式とすることが一般的です。

(1)寄付型

「寄付型」では、出資者への見返りはないことが一般的です。
出資者の目的は選挙の応援であったり、地震からの復興であったりします。いわば「推し活」に近いもとも言えるでしょう。
出資を受け、プロジェクトを遂行する側は、定期的にプロジェクトの活動報告などを行い、出資者に対し集められた資金がどう使われているのかを明らかにすることで明瞭な運営を行っていくことになります。

(2)購入型

良いアイデアや技術があっても、資金不足で製品開発が思うように進まない事業者に対し、出資者がプロジェクト達成後に完成するであろう商品やサービスなどを受け取ることを前提に購入代金を前払いするパターンです。無事プロジェクトが達成できれば、出資者は、完成した商品やサービスの提供を受けることができます。

(3)投資型

投資型のクラウドファンディングでは、利息や株式、配当金といった、通常の投資のように金銭的なリターンが設定されています。
さらに投資型は「ファンド型」「ソーシャルレンディング」「株式型」の3種類に分かれます。

<投資型クラウドファンディングの3類型>

類型 概要 リターン
①ファンド型 出資者の提供した資金をファンドで集約し、企業に投資する 投資先の売上・利益に応じた分配金
②ソーシャルレンディング 出資者の提供した資金を企業に「融資」する。 銀行融資よりも高い金利が設定されることが多い。 貸付先から支払われる金利
③株式型 出資者が出資先(主に未上場のベンチャー企業)の株式を購入することで企業の株主になる方法 株式・配当金

このうち「株式型」のクラウドファンディングは、法改正や税制優遇措置の拡充といった追い風もあり、ここ数年間でスタートアップ企業にとって有力な資金調達手段となりつつあるほか、出資する側にとっても仲介会社を通じ、未上場株を購入することが可能になったことで、敷居の高かった未上場株式の売買が身近な存在になりつつあります。

2.クラウドファンディング仲介業者とは? 資金調達実績は?

株式投資型クラウドファンディング制度は、新規成長企業への成長資金の円滑な供給に資することを目的として、未上場株式の発行を通じた資金調達を行うための制度として2015年5月に創設されました。
この制度によって生まれたクラウドファンディング仲介業者は、民間のプロの目利きであり、かつ専門的知識や経験を活用して投資先企業の成長を支援していく位置づけとされ、金融庁の監督下にあるほか、日本証券業協会の自主規制規則に従うこととされています。
また、取扱業務が少額(発行総額 1億円未満・一人当たり投資額 50万円以下)の株式等の募集の取扱い等に限定されていることや、有価証券の売買や引受け等の業務を行わないことから、「第一種少額電子募集取扱業者」とされ、登録要件の一部が緩和されています。

2022年9月末現在で株式型クラウドファンディングの仲介会社は5社が登録されています。
年間103件の案件が募集され、79件が成立。調達総額は24億円を超えました。1案件当たりの調達額は約31百万円でした。(2021年実績)
主にシード・アーリーステージのベンチャー企業に対し、支援目的や投資目的の個人投資家が少額ずつ投資を行っており、クラウドファンディングの実施を通じた宣伝・マーケティング効果も期待されることから、株式型クラウドファンディング活用を展望する企業数は今後も増えていくと考えられています。

3.株式型クラウドファンディングのメリットとデメリット エンジェル税制の拡充でさらに追い風!?

(1)株式型クラウドファンディングのメリット

最大のメリットは法改正により、もさまざまな企業やプロジェクトに少額かつ分散して投資できるようになったことです。
ベンチャーキャピタルに代表されるようなプロの投資家が行うような大きな資金でなくとも、数万~10万円程度の少額から複数の企業に投資でき、投資した企業の成長を見守り、応援しつつ、もしIPO(新規上場)やM&A(事業譲渡・合併等)によって、イグジット(Exit 出口のこと)が叶った時には投資家は売却益を得ることも可能です。

次に、ベンチャー企業に対して、個人投資家が投資を行った場合、投資時点と、売却時点のそれぞれのタイミングで税制上の優遇措置を受けることができます。
この税制上の優遇措置を「エンジェル税制」と呼びます。
税制上の優遇の対象となる企業に投資した場合、その年の投資金額を株式譲渡益から控除したり、総所得金額から控除したりすることができます。
もちろん全ての募集企業が優遇の対象となるわけではありませんが、上場株式の売買による利益がある場合や、一定程度の給与所得・事業所得等がある場合など、税申告の際控除として利用できれば節税に繋がる可能性があります。

(2)株式型クラウドファンディングのデメリット・注意点

株式型クラウドファンディング仲介会社が募集する未上場企業株を購入した場合に起こり得る最大のデメリットは投資先の破綻です。
投資先が破綻した場合は、投資資金の回収ができない可能性があるほか、破綻しないまでも、イグジットには至らないケースもあり得ます。
また、イグジットできた場合でも投資した金額を下回るリターンとなる可能性も十分あることや、イグジットまでには相応の時間がかかることもあることを踏まえた上で投資を行うことが重要です。

次に、流動性の問題です。
株式型クラウドファンディング仲介会社が募集する未上場企業株は売却しにくく流動性に乏しいことが一般的です。
未上場株式は取引場所を介さず、投資家自身が買い手を見つけることは非常に難しく、自由な売買は実質困難であると考えるべきでしょう。
ただ、一部仲介業者では私設取引所(セカンダリー市場)の創設などに向けた動きなどもあり、今後未上場株式の流動性に関するデメリットはある程度解消される可能性もあります。

最後に、税務申告です。
上場株式等を特定口座で売買している場合、一般的に確定申告を行う必要はありません。
しかし、未上場株式の購入・売却を行い、税優遇を受けるためには確定申告を行う必要があります。
エンジェル税制に対して設けられている優遇措置は、投資した企業の属性よって異なることや、投資した時、売却した時にそれぞれ優遇措置が設けられており、確定申告に際しては、その都度異なる様式の書面を提出する必要があります。
確定申告に一定の馴染みがある方でも少してこずることが十分予想されます。

クラウドファンディング仲介会社の誕生で身近になった未上場株式の取引ですが、まだその歴史は浅く、税務上の取り扱いもやや難解なこともあり、税制上の優遇措置を活用する場合は、専門家のアドバイスを得た上で行う方が安心です。
まずは税務等に精通した専門家に相談するところから始めてみてはいかがでしょう。

廣瀬総合経営会計事務所では多様な領域に精通した専門家とアライアンスを構築し、個人投資家や成長を目指す起業家の皆様を支援する体制が整っています。

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