120年ぶりの民法改正
遺産分割協議の期限明確化で相続手続きは時間との勝負に? 

2021年(令和3年)4月に成立した「民法の一部を改正する法律」(以下改正民放)ではこれまで期限が定められていなかった遺産分割協議に実質的に期限を設けられ、2023年4月から施行されました。

相続を取り巻く法律が大きく変わり、今後の相続対策・手続きはこれまで以上に時間との勝負という側面も出てくることが予想されます。この記事では2023年4月1日から施行された改正民法が遺産分割協議と相続税申告・納付に影響する点について分りやすく解説していきます。

120年ぶりの民法改正が遺産分割協議に及ぼす影響

改正前の民法では遺産分割協議の期限がなかった!?

相続税の申告・納付は相続があったことを知った日の翌日から10カ月以内とされています。一方、遺産分割協議についてはこれまで民法上の期限が設けられておらず、相続人間で遺産分割を行う際には、寄与分や特別受益に基づく具体的相続分はいつでも主張することができるとされていました。

相続税の納付が発生しない基礎控除額以内の相続では、相続人間の主張が対立し、協議がまとまらないまま時間が経過してしまうケースや、相続発生後十数年を経てから相続時の不公平感に気付いたような場合でも、いつでも寄与分や特別受益の持ち戻しを主張することが可能だったため協議が長期化することが多くありました。

しかし、遺産分割協議が整わないまま年数が過ぎると、徐々に記憶が薄れ、中には相続人が死亡してしまうこともあります。このように年数が経てば経つほど事実関係の把握は困難になり、遺産の管理・処分がたなざらしになってしまうなどの問題が指摘されていました。

民法改正で特別受益と寄与分の主張は10年以内に制限

今回の改正民法施行で特別受益と寄与分に関する主張は相続開始後10年以内に制限されました。このため、遺産分割協議の期間も実質的に10年以内に制限されたと言えます。

参考:特別受益と寄与分

特別受益とは

  • 被相続人から遺贈(注)や生前贈与によって特別の利益を受けること。
  • 特別受益があった相続人は相続分を計算するに当たって「持ち戻し計算」が行われ、相続分は減る。
特別受益の例
  • 不動産・自社株式・事業用動産などの生前贈与
  • 住宅購入資金・教育資金などの生前贈与

寄与分とは

  • 被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度。
  • 寄与分が認められた相続人の相続分は増え、それ以外の相続人の相続分は減る。
寄与分の例
  • 被相続人の財産の維持や増加への貢献
  • 被相続人の療養介護への貢献

遺言が残されていない場合はすべての相続人間で遺産分割協議を行い、各相続人が特別受益・寄与分などを主張し、相続割合を決めることになります。当然、協議の結果取り分の増える相続人がいれば取り分が減ってしまう相続人もいます。

そのため、特別受益や寄与分は、遺産相続に関する論点の中でも、相続人の間で揉めやすいポイントとされており、協議では調整がつかず、長期化し、調停・審判に発展ケースも多いようです。

遺産分割協議が整わないまま10年経過したらどうなる?

改正民法の施行後は、相続開始の時から10年を経過してしまった後では、特別受益および寄与分の主張をすることができず、原則として、法定相続分(または指定相続分)でしか遺産分割をすることができなくなります。

もちろん救済策として例外規定も設けられていますが、この例外規定に当てはまるような特殊な事情がない限りは、10年経過により遺産相続において特別受益や寄与分を主張する権利を失うことには間違いなく、早めに協議を終え、遺産分割手続きを完了することがさらに重要性を増すと言えます。

申告期限までに遺産分割協議が整わない!
相続税の申告を10カ月以内にできないとどうなる?

加算税や延滞税などのペナルティが科せられる可能性がある

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。遺言等が残されていない場合、法定相続割合に応じた相続を行うか、法定相続人間で相続割合を決めるために遺産分割協議が行わなければなりません。

この遺産分割協議が長引いてしまった結果、相続税の申告書を申告期限までに提出できなかった場合や、申告期限を過ぎて申告書を提出した場合には、無申告加算税や延滞税がかかり相続税の負担が重くなる可能性があるので注意が必要です。

また、相続税の納税は連帯納付義務があるとされており、遺産分割協議の内容に基づき、自分はすでに納付を済ませていたとしても、未納の相続人がいる場合にはその他の相続人の相続税を負担することになる可能性もあります。

相続税を軽減できる控除や特例制度を活用できない

相続税の計算に際しては、納税額を減らすことができる様々な特例措置が設けられています。もし、10か月以内に相続税申告・納税が終わらなかった場合はこうした特例が使えません。

相続税 期限内申告で活用できる特例措置

  • 配偶者の相続税額の軽減の特例
  • 小規模宅地等についての評価減の特例
  • 特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例
  • 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例

これらの特例のうち、「配偶者に対する相続税額の軽減」と「小規模宅地等の計算特例」は適用できるケースも多く、節税効果も高いため使えないとなるとと相続税の負担額が大きく増加する可能性もあります。

遺産分割協議が整わなくても
相続税の申告をする方法は?

遺産分割協議において特別受益や寄与分の主張ができる期間が10年以内とされたことで、協議にかかる時間を一定程度短縮する効果が期待されます。ただし、相続税の申告・納付期限である10か月と比べると、あまりにも大きな開きがあり納付期限までに遺産分割協議が整わないことも十分考えられます。

遺産分割協議が整わないなどの理由で、10か月以内に相続税申告・納税ができない場合には相続財産を未分割状態のまま申告する方法があります。相続財産を法定相続分で分割したと仮定して計算し、未分割状態であっても申告を行うことで、一応は期限内の申告と納税を済ますことができ、無申告加算税や延滞税を避けることができます。

ただし、この方法では申告時点では「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」が使えないので、一旦納める税額は多くなってしまいますが、最初の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、遺産分割協議が終わったあとに遺産分割を行った日の翌日から4カ月以内に改めて特例を使った相続税の申告をやり直せます。

遺産分割協議をスムーズに進めるためには
どうしたらいいの?

遺言がない場合など、法定相続割合に基づく遺産分割協議を行うことが一般的です。その場合、各相続人がそれぞれの主張を繰り返すあまり、遺産分割協議が長期化してしまうこともあり得ます。そのため、相続税の申告・納付期限である10か月以内に遺産分割協議がまとまらず、申告期限を過ぎてしまった時は、相続人が連帯してペナルティを被ることになってしまいます。

遺産分割協議の長期化を避け、スムーズな遺産分割や相続税の申告・納税を行うには、被相続人自身が生前元気なうちに公正証書遺言を作成しておくことが最も有効な方法といえます。

公正証書遺言は自身で作成することも可能ですが、整えなければならない様式が厳格に定められているため、専門家のアドバイスを仰いだ方がスムーズに作成できます。

廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、相続税に関する様々なご相談に加え、各分野に精通した専門家とも連携し、相続に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスまで一括サポート可能です。

また、地域密着の相続専門のサービスとして杉並・中野相続サポートセンターを運営しており、これまでに2500件を超えるサポート実績があります。

既に相続対策を講じている場合も今回の法改正を経て改めて修正が必要になるケースもあり得ます。これから相続対策を検討する方はもちろん、相続に関する疑問やお悩みをお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。

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