意外に難しい?
親に相続の話を切り出すタイミングと注意点
将来、親が亡くなり相続が発生した時はどうしたらいいのだろう…と不安に感じている方は多いのではないでしょうか?
一方で、親子の間でも相続に関する話題は、お金が絡む話でもありなかなか話題として切り出しにくいものです。相続の話を切り出した瞬間、親が不機嫌になり、せっかくの家族団欒のひと時が水を打ったように静かになってしまった、といったような話も実際によく聞く話です。
この記事ではなかなか話題にしにくい相続に関する話の切り出すタイミングについて解説していきます。
親は「まだまだ」 子供は「そろそろ」
親子間の相続観にはギャップがある
相続についての考え方には親子間でギャップがあることを理解する
まず押さえておきたいのは親子間の相続に対する考え方にはギャップがあるという点です。
MUFG総合研究所が2021年6月に公表した「日本人の相続に対する意識調査」によると、財産を渡す側すなわち親が感じる生前の負担と不安のベスト3は「自身の介護」、「高齢時の認知機能の低下」、「入院費用などの経済的負担」とあり、相続に関する不安点を挙げた人は極めて少ない結果となりました。
一方で、相続を受ける立場、すなわち子供の立場からみた「事前に親に準備してほしいこと」のトップは「財産整理」についてでした。続いて、「死後の事務手続きや財産処分」、「財産配分と承継」と続き、4番目に「入院や介護に関する要望」となっており、親子間に相続に関する心配事にはギャップがあることが見て取れる結果となりました。
親の不安は自身の健康や経済面の不安であるのに対して、子どもは相続関連の手続や税金、財産の把握を心配する声が多数を占めており、まさしく親は「まだまだ」 子供は「そろそろ」の状態であることがよくわかります。
「親はまだまだ」はデータ面でも裏付けられている
国境なき医師団日本が2018年に実施した、全国の20代~70代の男女1200名を対象に実施した「遺贈に関する意識調査2018」によると、遺言書準備の必要性を理解している人は70代で約6割と、関心が高いことがうかがえる一方で、実際に遺言書の準備を終えている人の数は8.5%に留まっており、遺言書をはじめとする相続の準備に着手している人の数はまだまだ少ないことが分ります。
また、遺言書は元気なうちに書くべきだとする人が全体で72.5%、70代に限定すると77%と約8割の人がそのタイミングについて「自分が元気なうち」と考えていることが分ります。
とはいえ、なかなか自分から遺言書をはじめとする相続の準備に取り掛かるのは気が重い話のようで、「親はまだまだ」という相続観はこうしたデータからも見て取ることができます。
相続の話を切り出すタイミングを決める
最大のポイントは「親の健康」
相続対策への着手は親が心身ともに元気なうちにスタートするのがベスト
相続の話を親に切り出すタイミングとして、強く意識してほしいことは親が心身ともに元気なうちに行うことです。
人間だれしも年齢とともに気力体力は衰えていくものです。親が心身ともに元気なうちであれば、正確な財産を把握し、財産の処分の方向性についても話し合う余裕が生まれます。
親が認知症になると相続対策の難易度は一気に上昇する
親が心身の健康を失った後では相続対策を検討する余地が一気に狭まります。中でも親が認知症になった場合は、特に多くの労力が必要になります。
認知症になった人の財産管理や身上監護について自治体の支援センターの相談窓口で相談を行うと、成年後見制度の活用を勧められることがあります。
成年後見制度は、認知症などにより判断能力が低下している人を支援する制度です。この制度の申請を行うと、成年被後見人(認知症になった人)の財産管理を担う人として、成年後見人が選任されます。
成年後見人の申し立てを行うには、登記のための印紙費用などのコストが必要となる上に、親族以外の専門家を選定した場合には月額2~6万円程度の報酬が発生することが一般的です。
また、一旦提出した成年後見人の申請を取り下げるのは難しいとされており、この費用負担は親は亡くなるまでの間ずっとかかり続けることになります。
さらに、一旦成年後見人が選定された後は、たとえ実子であっても親の財産に触れることはが原則できなくなってしまい、生前贈与などを用いた相続対策を行うことも難しくなってしまいます。
このように、親が健康を害することによって、相続対策の難易度は一気に増すことになります。相続の話は親が心身ともに元気なうちに話を切り出すことが大きなポイントであると言えます。
親に相続の話を切り出すタイミング 3選
その1親が病気・ケガをした・入院したタイミングで相続に関する話を切り出す
子から親に相続の話を切り出すのに最適のタイミングとされるのは親が病気をしたタイミングです。自身の病気は自らの死を遠い将来のものとしてではなく、身近な話としてきちんと向き合うことを余儀なくされるタイミングともいえます。
また、重篤な病気でない場合であっても、自宅での転倒による骨折などのケガは、親自身に心身の衰えを自覚させるきっかけになります。
治療を行う過程で、ケガや病気による入院・治療の過程で、親はどんな治療方法を望むのか、住んでいた自宅は将来どうしたいのか、親の感情に配慮しつつその子供が親の思いを把握するチャンスであると同時に、親も相続を我が事として考えるきっかけになる可能性が高いといえます。
その2近親者・友人知人の家庭で相続が発生したタイミングで相続に関する話を切り出す
身近な人の相続があったタイミングも自らの相続について考えるよいきっかけになると言われています。
特に、相続がきっかけで親族間に争いごとが生じ、円満だった関係性が一気に冷え込んでしまったような事態に遭遇したときなどは、親自身が自分の相続ではああいう風になりたくないという思いを強くすることになり、相続を我がこととして考える材料になりやすいといえます。
その3相続人多くが集まる機会を活用して相続に関する話を切り出す
相続人が多く集まる機会を利用して子から親に対して相続に関する話を切り出すのも有効な手段です。
お盆や年末年始などはもちろん、回忌法要のイベントなども懐かしい話を思い出しつつ将来の相続に関する話を切り出すタイミングとしてはとてもよいきっかけになり得ます。
また将来の相続トラブル回避の側面から見ても、相続人全員が集まる機会で相続に関する話を切り出すことはきわめて有効です。
もし、親が同居している子供とだけ相続について話を進めていたようなことを他の相続人が知った時、相続対策を勝手に進めていたと思われ、将来感情的なしこりが生まれやすくなります。結果として、後々の相続手続きや遺産分割協議での言い争いの種になる危険性が生むことになってしまいます。
将来の争いごとを未然に防ぐ意味でも、お盆や年末年始、回忌法要等の場といった相続人全員が集まる可能性が高い場で、親に相続に関する話を切り出すのはよいタイミングになり得る可能性が高いと言えます。
相続対策の専門家のアドバイスは必要?
専門家に相談するならどのタイミング?
相続や終活の話をどのように両親に伝えるべきか、悩んでいるうちに時間だけが過ぎ、徐々に親の健康状態にも不安が芽生えてくるなど、時間がたてば経つほど相続対策に着手するのが難しくなり、結果的に何も準備できないまま相続を迎えてしまう可能性が高くなります。
相続税の申告・納付期限は相続開始日から10か月以内とされているため、相続財産の把握といった事前準備が不十分な状態で親が亡くなった場合、いちから手続きを始めなくてはならず、膨大な時間と労力を要します。
関連サイト国税庁「No.4205相続税の申告と納税」
また、期限内に相続税申告・納税ができないと延滞税の発生など様々な不都合も生じてしまいます。仮に、相続税の納付が発生しないような財産額の場合でも、遺言等がない場合は遺産分割協議を行う必要があります。
事前準備が何もないまま遺産分割協議を行った場合、協議が難航の末、感情的なやり取りに発展してしまい、親族間の関係が悪化してしまい、調停・審判に及んでしまうこともあり得ます。
こうした悩み・トラブルを防ぐ意味でも相続に関する専門家への相談はできるだけ早い段階、何よりも親が心身ともに元気なうちから着手した方がよいと言えます。
時間に余裕を持って取り組めば、二次相続も含めた相続対策の検討に寄り添ってくれるよき専門家と出会える可能性も高まります。
廣瀬総合経営会計事務所は杉並・中野相続サポートセンターの運営母体として、在籍する経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが長年にわたり地域のお客様の相続に関する支援を行って参りました。
また、各分野に精通した専門家とも連携し、相続に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスから申告・納税まで一括サポートが可能です。
親と相続に関する話を始めるきっかけとしても当事務所の無料の初回相談を利用してみてはいかがでしょう。相続に関する疑問やお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。