株式暴落4つのパターンと損失が出たときに
できることを税理士事務所が解説
株価が短い時間で大きく下落したときに「株価暴落」という名前を聞くことがあります。
投資家から見たら自分の投じた資金がみるみるうちに失われていくのですからその精神的なダメージは大きく、その趨勢が心配で夜も眠れなくなることもあるかもしれません。
本記事では過去に起こった様々な株価暴落を4つのパターンに分類して振り返りながら、株価が急落して損失が出たときの節税方法について税理士事務所が分かりやすく解説していきます。
株価暴落とはどのような状態を指すのか
株価暴落とは、短期間で株式市場全体の価格が急激に大幅下落することを指します。過去の暴落を振り返ってみると、そのの原因はさまざまです。
具体的に「株価暴落」がどの程度の下落を意味するかについては明確な基準はありませんが、「極めて短期間に」「大きな下落幅を記録する」ことを指すことが一般的です。
5%以上の下落で「急落」、10%以上の下落があると「暴落」と呼ばれることが多いようです。また、数日から数週間で20%以上の下落が発生した場合には「市場崩壊」と呼ばれることもあります。
その1金融政策と金利の変動が原因で
起こった株価暴落
1つ目の原因として挙げておきたいのが、国の金融政策(金利)の変更です。過去の株価暴落を振り返ると、金利を引き上げようとしたときに株式暴落発生している例が多く見て取れます。多くの中央銀行は景気の過熱を抑制し、インフレを抑制しようとするときに金利を引き上げます。
逆に景気を刺激し、経済を活性化させたいときには金利を引き下げようとします。金利が上昇すると、企業は借入をして新たな設備投資をしようとする意欲が減退します。個人は借入れ(住宅ローン)をして住宅を購入しようとする意欲が減退します。
このように中央銀行がコントロールする短期金利の引き上げは企業の活動や個人の消費活動などにとってはブレーキとなり、結果として景気を冷ます効果があることで知られています。
また、金利の上昇はPER(株価収益率)の低下につながるため、相対的にバリュエーションが低下する株式(特にグロース株)は売られやすくなります。
関連サイト三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社「PER/株価収益率」
代表例として挙げられるのが、1987年のブラックマンデーや2008年の金融危機(サブプライムローン危機)です。
ともに中央銀行、特にFRB(米連邦準備制度理事会)の金利引き上げ・金融引き締めをきっかけとした株価の暴落でした。高金利政策により企業の資金調達コストが上昇し、景気が悪化するとの懸念が投資家に広がり、株価が暴落した例といってよいでしょう。
金融政策と金利の変動が原因で起こった株価暴落
いつごろ | 名称 | 株式市場の下落幅 |
---|---|---|
1987年 | ブラックマンデー | ダウ平均:-22.6%(1日で) プログラム売買の普及、過剰評価された株価、金利上昇の懸念 |
2007年~2008年 | サブプライムローン危機 | ダウ平均:-54%(約1年半で) サブプライムローンの焦げ付き、米国の住宅バブル崩壊 |
その2システムリスクと市場メカニズムの
欠陥が原因で起こった株価暴落
2つ目の暴落の原因はシステムリスク・市場メカニズムの欠陥が原因とする株価暴落です。テクノロジーの進化は株式取引にも大きな影響を与えてきました。
中でも、プログラム取引と呼ばれるコンピュータを用いて事前に決められた条件に基づき、株式の大量売買を自動的に行う取引手法はしばしば暴落の引き金になっていることが知られています。
株価が急落すると、プログラム取引システムは事前に設定された「ストップロス注文」を発動し、大量の株が自動的に売却されます。
関連サイト日本取引所グループ「ストップロスオーダー」
そのため、一旦急激な下落方向に株式市場が向かうと、売りが売りを呼ぶ連鎖反応が起き、さらなる株価下落を招きます。このような負のスパイラルが市場全体のパニックを引き起こし、大規模な暴落につながったとされています。
前述の1987年の「ブラックマンデー」の株価暴落は金融政策の変更(金利引き上げ)とプログラム取引が悪いタイミングで重なったことで生まれた暴落だったと言えます。
また、2010年5月6日に起こった「フラッシュクラッシュ」では、ダウ平均がわずか数分で約9%急落し、その後急速に回復するというハプニングがありました。
テクノロジーの進化で高頻度取引(HFT:High Frequency Trading)が一般化する中、特定の取引業者が誤ったアルゴリズムを使用したことをきっかけに他のプログラム取引システムに波及し、大量の売却注文を一斉に実行したことが原因となり、短期間での大幅な株価の変動が発生しました。
関連サイト野村證券「高頻度取引」
ブラックマンデーのシステムリスクによる株価暴落を教訓として、株価の急激な下落を防ぐため、米国の証券取引所ではサーキットブレーカー制度が導入されています。
これは、一定の下落率に達すると取引を一時停止し、冷静な判断を促す仕組みで、ニューヨーク証券取引所(NYSE)では、S&P 500が7%、13%、20%下落した場合、それぞれ異なる時間で取引を停止する制度が採用されています。
システムリスクと市場メカニズムの欠陥が原因で起こった株価暴落
いつごろ | 名称 | 主な原因と株式市場の下落幅 |
---|---|---|
2010年 | フラッシュクラッシュ | ダウ平均:-9.2%(1日で) プログラム売買の普及、過剰評価された株価、金利上昇の懸念 |
その3戦争等の争乱やパンデミックが原因で
起こった株価暴落
3つ目の株価暴落の原因として挙げておきたいのが戦争等の争乱やパンデミックが原因で起こった株価暴落です。その代表例として挙げられるのが米国で発生した「9.11同時多発テロ」と「コロナショック」です。
まず、2001年に起こった「9.11同時多発テロ」についてみていきましょう。
テロが発生した9月11日当日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダックは、通常取引時間前に取引を停止しました。9月17日(月)に再開されるまでの4日間、市場は閉鎖されたままでした。これは第二次世界大戦以来の最長の取引停止でした。
再開直後の市場は急落し、ダウ平均株価は取引再開日の17日だけで684ポイント(約7.1%)下落、1週間で約-14%の下落幅を記録しました。
株式市場の動揺を鎮めるため、連邦準備制度理事会(FRB)は、取引再開日の9月17日に政策金利を0.5%引き下げました。また、FRBは銀行システムに多額の流動性を注入し、金融システムの安定を図りました。
次に「コロナショック」についてみてみましょう。2020年に起こったCovid19、いわゆるコロナウィルスのまん延によるパンデミックを引き金とする株価暴落でした。
パンデミックの影響により、各国がロックダウンを実施し、経済活動は一時的に停止しました。航空業界、旅行業界、エネルギーセクターなどが特に大きな打撃を受け、企業活動の停止や消費の急減により、多くの企業の株価が急落しました。
前述したサーキットブレーカーの発動も、4回にわたって行われ、市場のパニック的な売りを一時的に停止する措置が取られたほか、FRBが2週間で政策金利を0%~0.25%まで大幅に引き下げと同時に、国債や住宅ローン担保証券(MBS)を積極的に買い入れる「量的緩和(QE)」を実施することで市場に大量の資金を供給して金融市場の安定を図りました。
一方で、「コロナショック」はリモートワークやEコマースの急速な普及を促すことになり、そのインフラとなるテクノロジー関連株はその後現在に至るまで大きく上昇しています。
同時に、欧米諸国では低金利政策と量的緩和の副作用として賃金・物価の上昇が発生し、それらを鎮静化させるために短期間での金利引き上げを余儀なくされたことも記憶に留めておきたい出来事の一つです。
戦争等の争乱やパンデミックが原因で起こった株価暴落
いつごろ | 名称 | 主な原因と株式市場の下落幅 |
---|---|---|
2001年 | 同時多発テロショック | ダウ平均:-14.3%(1週間で) 9/11テロ事件による経済と市場の混乱 |
2020年 | コロナショック | ダウ平均:-37%(約1ヶ月で) 新型コロナウイルスの世界的拡大、経済活動の停止 |
その4国家の債務危機(ソブリンリスク)
通貨危機に起因する株価暴落
4つ目の株価暴落の原因は「国家の債務危機・通貨危機」に起因する暴落です。
通貨危機とは、特定の国の通貨が急激に価値を失う状況を指します。国家の財政状況が悪化したり政治的な不安定が続くと、投資家はその国の資産から資金を引き上げようとします。そのため、その国の通貨は売られて価値が下落します。
特に新興国が外貨建てで多額の借金をしている場合、通貨が下落すると元利払いの返済負担が増大します。このため、通貨安が進行すると同時にデフォルト(債務不履行)のリスクが高まります。
これは国が発行する国債の利払い・元本償還ができないリスクですので、多くの投資家はリスク回避のために株式を我先に売却しようとするため暴落に繋がるとされています。
いつごろ | 名称 | 主な原因と株式市場の下落幅 |
---|---|---|
1997年 | アジア通貨危機 | 日経平均:-20%(数ヶ月間で) タイのバーツ危機から東南アジア諸国へ波及、経済不安と通貨の急落 |
1998年 | ロシア金融危機 | ダウ平均:-19.3%(数週間で) ロシアのデフォルト宣言、原油価格下落、LTCMファンドの破綻 |
2011年 | 欧州債務危機 | 欧州主要株式:-20%(約3ヶ月で) ギリシャを中心とした南欧諸国の債務危機 |
株式売却で損失が出たときにできること
困ったときは専門家に相談を
暴落の原因は様々ですが、こうした暴落は10年に一度は訪れており、そのたびに個人投資家は驚き、これ以上の損失を回避するために我先に持ち株を売却しようとします。
このように投資家が心理的に動揺して損失を拡大させる恐れから、保有株を急いで売却してしまう行動ことを「ろうばい売り」といいます。
確かに、保有株式を手放すことでさらなる損失を回避できるほか次の投資チャンスに備えるキャッシュポジションを確保できるというメリットがある一方で、投資家は損失の確定を余儀なくされます。
株式売却で損失が出た場合には、損益通算や繰越控除を活用することで、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。ただし、これらの制度を効果的に利用するためには適切な確定申告が必要です。
株式の売却にともなう確定申告、とりわけ損失が出たときの確定申告はやや難しくなります。
特に、繰越控除の申告は毎年行う必要があり、複数年の取引内容をしっかりと管理することが求められます。スムーズな確定申告を行うためには税理士をはじめとする専門家のアドバイスがあった方がよいでしょう。
廣瀬総合経営会計事務所では経験豊かな税理士、行政書士、FPなどが在籍しており、資産の譲渡に関連して発生する税金に関する様々なご相談に加え、相続に関する相談をお受けしています。また、各分野に精通した専門家とも連携し、税金に関して起こりうる様々なトラブルへの対処方法へのアドバイスから記帳・申告まで一括サポート可能です。
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