新型コロナ貸付の返済にどう対応するか?

新型コロナ貸付の実施から約2年が経ち、据置期間が終わり返済が始まる企業は少なくありません。自社の状況を再確認し、返済開始後の財務状況をしっかりと把握し、対処する必要があります。

借入一本化で返済額を軽減

新型コロナ貸付の据置期間が終わって返済が始まるのですが、コロナ以前の借入もあるので心配です。

返済が始まると、当然のことですが、これまで以上に返済額が多くなりますので、その分の資金を 税理士確保しなければなりません。

まずは、現在の利益からどれだけ返済に回せるかを検討し、利益確保が難しければ固定費の削減などの改善を行うことが必要です。借入が多ければ借入一本化を行い、月々の返済額の軽減を図ることを検討しましょう。
経済産業省が発表した「中小企業活性化パッケージ」では、 コロナ資金繰りの支援の継続が盛り込まれ、実質無利子・無担保融資の申し込みが2022年6月末まで延長されるとともに、運転資金の借入期間が15年から20年に延長されました。
これにより、 日本政策金融公庫の融資であれば、借入一本化を申し込むことができ、毎月の返済額を抑えることが可能になります。
例えば、下図のように、借入期間5年での借入が複数あった場合に、一本化して20年とすれば、毎月の返済額の負担を軽減することができます。
しかし、毎月の返済額は軽減できるのですが、借入期間の長期化で利息の負担は大きくなります。長期的な目線で検討することが必要です。

借入一本化の例
●現状
借入500万円
借入期間5年
計3本毎月返済額252,000円
●借入一本化後
借入1 ,500万円
借入期間20年
計1本毎月返済額62,000円
※毎月返済額は元金均等返済で計算した元金返済額です。

また、借入の種類によっては一本化できない場合等もありますので、 自社の借入が一本化に対応できるか、金融機関に相談することが第一です。
なお、民間金融機関の借入一本化については、各金融機関に確認してみましょう。

返済額の軽減だけでなく改善計画もセットで検討する

返済額は軽減できても、コロナ禍が続けば、業績が再悪化しないか心配です。

もちろん業績の改善も行わなければなりません。特に利益の確保は不可欠です。借入期間が長くなった分に伴い、中長期的な経営計画を考えましょう。
世の中がどのように変化しようとも、利益を出し続け、資金繰りが好転するような会社への体質改善に着手しましょう。

返済額の軽減とともに、財務の改善もセットで考えなければならないのですね。

その通りです。「中小企業活性化パッケージ」では認定支援機関による伴走支援強化についても盛り込まれています。伴走支援には「ポストコロナ持続的発展計画事業」などがあり、改善計画の策定費用の一部補助、計画実行のためのフォローアップや助言などの支援があります。

今後、融資が必要な場合は利益確保の根拠が求められる

今後、融資が必要なときも出てくるでしょう。一本化後も借入はできるのでしょうか?

もちろん借入ができないというわけではありません。売上増加を図るための新規開拓などの改善計画を策定する際、どうしても資金が必要になる場合もあります。
その場合は、金融機関に、新規借入を織り込んでも返済原資の確保が見込まれることがわかる資料を添えて説明しましょう。
また、返済額については、一本化後でも、利益が十分に確保できる金額に設定するなど、 よく検討しましょう。

利益の確保についての根拠があれば、借入も検討できるということですね。

しかし、借入がさらに増えることになるので、申し込みは慎重に判断する必要があります。融資には、いくら借りることができるといった絶対的なものはなく、そのときの状況などで判断されることが多いのです。そのためにも、月次決算で会社の財務状況を常に把握しておくようにしましょう。

《参考情報》
ウクライナ情勢で影響を受けた事業者への支援
ウクライナ情勢の影響を受ける事業者への資金繰り支援として、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の要件が、次のように緩和されました。
対象要件が最近3か月の売上高が前年同期または前々年同期に比べて5%減少等から、数値要件を満たさずとも、資金繰りに著しい支障をきたしている、またはきたす恐れがあれば、対象とする。
上記の要件を満たしており、ウクライナ情勢・原油価格上昇の影響を受け、利益率が5%以上減少している場合、特別利率183%~210%(担保不要の場合/令和4年4月1日現在)が適用となる(国民生活事業)。
※中小企業事業の場合、上記は長期運転資金に限り、基準金利-02%