2025年4月に施行される改正雇用保険法のポイントを
税理士事務所が解説

コラム, 新着情報

2025年4月施行となる改正雇用保険法は、キャリアアップと同時に育児・介護の両立を目指すなど多様な働き方を志向する労働者にとってセーフティーネットが拡充されるポジティブな改正である一方で、経営者側から見た場合、人材確保の面でネガティブな改正となる可能性もある内容です。

本記事では改正雇用保険法の概要と経営者が押さえておきたいポイントについて税理士事務所が解説していきます。

そもそも雇用保険法制度とは

雇用保険制度は多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットとして設計されています。労働者が失業した場合、能力開発のための教育訓練を受ける場合、育児休業を取得する場合などに、必要な給付を行い、労働者の生活や雇用の安定を図ることを目的としています。

2025年4月に施行される雇用保険法制度では、主な機能として、失業給付(基本手当)では自己都合退職者が特定の教育訓練を受けた場合に給付制限が緩和されます。教育訓練給付金は、労働者の主体的な能力開発を支援するため、厚生労働大臣が指定する教育訓練の受講・修了時にその費用の一部を支給し、今回の改正で給付率引き上げや追加給付が創設されます。

さらに、育児休業給付の財政基盤安定化のための見直しや、自発的な能力開発のための教育訓練休暇取得時に基本手当相当の給付金が新設されます。

また、被保険者の要件が週所定労働時間「20時間以上」から「10時間以上」に拡大され、より多くの短時間労働者が対象となり、セーフティネットが広がります。

関連サイト厚生労働省「雇用保険制度

雇用保険法が法改正に至った背景と
法改正が目指すもの

法改正の背景にあるのは労働力不足と生活不安の増大

近年、労働市場の変化に伴い、非正規雇用の増加や少子高齢化による労働力不足が深刻化しています。また、ワークライフバランスを重視する風潮が強まり、育児や介護と仕事を両立できる環境の整備が求められてきました。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、失業や雇用不安を抱える人々が増えたこともあり、社会全体で労働者の生活を支える制度の見直しが必要とされていました。

雇用保険法改正の全体像

雇用保険法を改正前後で比較すると以下の表のようになります。

早期再就職した場合の手当(就業手当・就業促進定着手当)の引き下げ・廃止などややマイナスになる改正もありますが、概ね労働者側にとってポジティブな改正内容といえます。

改正項目 改正前 改正後
雇用保険の適用対象 週20時間以上勤務の労働者が対象 2028年10月に向け、対象者を週10時間以上勤務の労働者に段階的に拡大
育児休業給付の給付率 休業開始から6ヶ月間は賃金の67%、以降は50%を支給 休業開始から全期間を通じて賃金の80%を支給
失業手当の給付制限 自己都合退職の場合、2ヶ月の給付制限あり
  • 原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮
  • 教育訓練給付金の対象となる教育訓練を修了した場合、給付制限なしで基本手当を受給可能
教育訓練給付制度
  • 一定の要件を満たす労働者が対象
  • 補助率は最大で70%
  • 専門性の高い特定の分野の教育訓練においてはトータルの補助率が最大80%にアップ
  • 教育訓練休暇給付金の創設

改正雇用保険法で押さえておきたい
3つのポイント

ポイントその1雇用保険対象層の拡大を通じた労働者のセーフティーネットの強化

改正雇用保険法が目指すのポイントの1つ目は労働者のセーフティーネットの強化です。

今回の改正では雇用保険の適用範囲を広げ、これまで雇用保険の適用対象外だった週20時間未満勤務のパート従業員等も段階的に雇用保険の対象となることが見通されるなど、より多くの労働者が失業時や育児休業中の経済的支援を受けられるようになります。

関連サイト厚生労働省「雇用のセーフティネットの在り方について

ポイントその2育児休業給付の給付率アップで育児と仕事の両立支援

2つ目のポイントは育児と仕事の両立支援の強化です。

既に児童手当法を根拠法とする児童手当は2024年10月に所得制限の廃止を含めた増額改正が行われているほか、健康保険法・国民健康保険法を根拠法とする出産一時金も2023年4月に増額され50万円になるなど近年は子育て支援に重点を置いた法改正が実施されてきました。

加えて、今回の雇用保険法改正では育児休業給付の給付率が引き上げられます。育児休暇を取得しても経済的なダメージが軽減されるようになることから、男女ともに育休取得が活発になり得ることが見込まれます。

関連サイト厚生労働省「育児休業等給付について

ポイントその3給付制限緩和で人材の流動性の向上とスキルアップ支援の強化

3つ目のポイントは人材の流動性向上とスキルアップ支援策の強化です。

従来から日本の雇用は厳しい解雇規制による労働者側に対して手厚い内容となっていた一方、社会情勢の変化に応じた人材の流動性を阻害しているとの指摘もなされてきました。

今回の改正では失業手当の給付制限(いわゆる待期期間)を緩和すると同時に、職業訓練を受講する労働者への支援強化が行われており、法改正を通じたスキルアップとキャリアチェンジを促進することで、人材の流動性を高めようとする改正となっています。

このうち失業手当の給付制限は、今回の改正で自己都合退職後に教育訓練を受けた場合は、給付制限なしで失業手当を受給できるようになるなど労働者のキャリアチェンジやスキルアップを後押しする改正内容となっています。

関連サイト厚生労働省「求職者支援制度のご案内

改正雇用保険法がもたらす影響とは?

労働者側にはポジティブな法改正

今回の改正は雇用保険の適用対象が拡大される方向になったことや、育児休業給付の給付率引き上げなど、働く労働者側にとってはポジティブな改正といえます。いずれの改正もセーフティーネットの拡充を通じた経済的な不安を軽減する効果が期待されます。

さらに自己都合退職であっても教育訓練を受ければ給付制限なしで失業手当を受給できるようになるため、より待遇の高い職場への転職や起業に積極的にチャレンジする機会も増えることが見込まれ、結果として人材の流動性が高まることが期待されます。

経営者側にはネガティブな法改正になる可能性も

労働者側にとってはほぼほぼポジティブな改正となっている改正雇用保険法ですが、雇う側、すなわち経営者側から見ると今回の改正雇用保険法はややネガティブな改正になるかもしれません。

雇用保険料負担の増加

まず一つ目のネガティブ材料は雇用保険料負担の増加です。今後段階的に適用対象となる従業員が拡大することで、短時間労働者分の雇用保険料の負担が増加することはほぼ確実です。企業は社会保険料に関する予算計画を見直し、適切な財務管理を行う必要があります。

育児休業取得者の増加

二つ目のネガティブ材料は育児休業取得者の増加が見込まれる点です。

従来の育児休業制度よりも給付率が引き上げられることで、育児休暇を取得した際の経済的なマイナス幅が大きく改善されます。これにより、男性・女性ともに育児休業を取得する従業員が増える可能性があり、業務の引き継ぎや代替要員の確保が必要となるケースが増えることが予想されます。

経営側としては、業務の引き継ぎ体制を整備し、育児休業者の業務をスムーズに引き継ぐためのマニュアル作成や、チーム内での業務共有を促進するなどの対策を講じるほか、テレワークやフレックスタイム制の導入により、育児と仕事の両立を支援し、従業員の満足度向上を図るなどの対策も必要になるかもしれません。

人材流動性の高まりによる人材流出のリスク

三つ目のネガティブ材料は人材流動性の高まりによる人材流出のリスクが増大することです。失業手当の給付制限緩和や教育訓練給付金制度の拡充により従業員が転職や退職を選択しやすくなり、人材の流動性が高まる可能性があります。

従業員の定着度を高めるためには経営者が職場環境を改善し、働きやすい環境とすることで従業員の満足度を高めていく取り組みが必要になります。

また、社内でのキャリアパスを明確化するなどして、従業員のキャリアアップの道筋を示すことで将来の展望を持たせると同時に、納得感のある評価制度を導入するなどして、モチベーションを高めることも新たな課題になり得ます。

経営者が改正雇用保険法で迷ったときには
専門家に相談を

2025年4月施行の改正雇用保険法は、労働者のセーフティーネットを強化し、育児休業の取得促進や職業訓練を通じた再就職支援を目的としています。しかし、企業にとっては保険料負担の増加や人材の流動性の高まりといった課題が生じます。

これらの変化に適応するためには、労働環境の整備、育児休業者への対応、そして人材の確保・定着に向けた取り組みが重要です。今後、経営者側は改正内容を十分に理解し、適切な対応策を講じることで従業員の満足度向上と企業の持続的な成長を両立させることが求められます。

しかし、こうした法改正で新たに生まれた課題に経営者が一人で向き合い、対策まで実行するのはかなり辛い作業といえます。迷ったときには経営全般の相談ができる専門家を頼ってみてもよいかもしれません。

廣瀬総合経営会計事務所は開業して30年以来、地域密着で様々な事業主様を支援してまいりました。記帳・確定申告をはじめとする法人の決算に関する支援はもちろん、法改正にともなう変化にどう対応すべきかといったような経営全般に関するご相談も承っています。

また、弁護士をはじめとする各分野に精通した専門家とも連携し、事業経営に関して起こりうる様々な課題への対処についてワンストップで対応しております。

決算・税金に関するご相談に限らず、経営全般の課題解決に向けたご相談ごとは、ぜひお気軽に当事務所にお寄せください。事務所はJR西荻窪駅・徒歩1分にあり、下記エリアを中心とした地域密着のサービスを展開しています。

廣瀬総合経営会計事務所・相続相談の対応エリア

  • 杉並区
  • 中野区
  • 三鷹市
  • 武蔵野市

初回利用者向けの無料相談会も開催しておりますので、まずは一度お気軽にお問い合わせくださいませ。

関連記事一覧